小寺信良のIT大作戦

議事録も資料もAIが作るなら、人間は何をする? AIエージェントへ舵を切る「Plaud」を試す(2/2 ページ)

自動化で何が起こるのか

 新しいプラットフォームでは、ファイル転送やサマリー化のための手作業がなくなった。またタスクの自動化も可能になり、録音にまつわる作業のかなりの部分を、自分で具体的に手を動かさなくても、AIに指示するだけで実行してくれるようになっている。

 この考え方の根幹にあるのは、ビジネスにおいて素早く物事が動く、前に進むというのは、常に人と人のリアルな話し合いの場で決まるという事実だ。メールやチャット、書類でのやりとりはあくまでも事前/事後確認であり、ビジネス上の直接交渉や決定の瞬間には使われない。人間はとにかく、人と会って話すことに集中し、それにまつわる手作業はAIにやらせる、という方法論である。

 同様のサービスを提供するオンラインツールはあるが、レコーダーと直結してはいない。録音ファイルをアップロードして…といった作業は避けられないところだが、もともと録音ツールから文字起こしサービスまでつながっていたPlaudは、一気通貫サービスに一番近いポジションにいた、ということである。

 手作業が減ることで人間は楽になる…というわけではない。人と話す側に寄るぶん、とにかく情報を頭に詰め込んでおき、即回答・決断できる状態で挑むことになる。ビジネスの回転が速くなり、資料を見ながら「えーとえーと」といった長時間ミーティングは過去のものになるだろう。ワールドワイドでは「決定が遅い」と評価されている日本社会に、一石を投じることになるかもしれない。

 新レコーダーのPlaud Oneがイヤフォン型になった理由も、なんとなく想像できる。Plaudのサービス基盤がPlaud Intelligenceとなり、即時ボイスコマンドを受け付けるようになったこと、音声で応答できるようになったことで、従来のようにマイクがあるだけのレコーダーでは十分に機能が引き出せない。このため、もともと音を出す機能があるイヤフォン型になったものと考えられる。またケースにもスピーカーが付けられており、イヤフォンを耳に入れなくても応答が確認できる。

 そこは理解するところだが、ビジネスシーンでイヤフォンやイヤフォンケースがなじむかという点においては、評価が分かれるところではないだろうか。そもそもイヤフォンとは娯楽の道具であり、筆者のようなオジサンから見れば、ビジネスの場にあまりなじまないように思える。「なんで今イヤフォン出した? やる気あんのか? お?」と相手に思われてしまう可能性はある。筆者の感覚は古いのだろうか。

 また、イヤフォンで録音できる点も、ビジネスシーンにおいては課題がある。アプリでは、利用者がイヤフォンによる録音の同意を取るよう求めているが、ケースによる録音に関してはそのような記載はない。イヤフォンからの録音は、録音しているという状況に見えないため、盗聴に利用される可能性があるからだろう。AIグラスが盗撮に使われるという問題と似たような話である。

イヤフォンでの録音は、参加者に同意を得ることが求められる
ケースでの録音には同意うんぬんの文言はない

 発表会では、従来型のカード型レコーダーの新作、「Plaud Note Pro Flow Edition」も紹介された。こちらは10月29日販売開始で、2万9700円(税込)となっている。Plaud Intelligenceに対応しており、録音後に近くにあるスマートフォンを自動検知して、バックグラウンドでPlaudアプリへ録音ファイルが転送される。そこから文字起こしと要約が実行されるため、ユーザーがデスクに戻るころには要約が完成している状態を目指すという。

録音から自動要約までノンストップとなる「Plaud Note Pro Flow Edition」

 こうしたカード型は、今やAIレコーダーの象徴的な「形」であり、認知も高まっている。そもそも名刺サイズが、ビジネス上の机の上になじみやすい。むしろこの従来の形状の中にスピーカーやeSIMを入れて、Plaud Oneのケース側のような機能を持たせた方が、日本のビジネスシーンにはなじみやすいのではないか。Plaud Oneが限定発売なのも、イヤフォンという形がどうなのか世の中に問うということなのかもしれない。

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ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。

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