イーバンクが資本金を減らして、これを処理することを考えた場合、「自己資本比率の低下から、BIS規制(銀行の自己資本比率に関する国際基準)に抵触するおそれがある。また、金融庁に提出した計画書どおりに、資本金を増加させることが困難になるという懸念もあった」(宮内CFO)。
ライブドアといえば、M&A(企業の買収・合併)を効果的に行うことで、事業規模を拡大してきた企業。現社名のライブドアにしても、旧ライブドアが民事再生法手続きに入ったのに伴い、このISP事業を取得したことに由来している(記事参照)。
ライブドアはイーバンクに出資するにあたり、「マイノリティー(の株主)では困りますよ」(宮内CFO)と交渉したという。つまり、ある程度まとまった額の資本を提供する見返りに、それ相応の影響力をもちたい考えを表明したわけだ。イーバンクが筆頭株主の椅子を用意したことから、ライブドアは「ある程度、社運をかけて」(ライブドアの塩野副社長)35億円近くの資金を投入した。
宮内CFOは、自社の株主から預かった大事な資金を出す以上、「その使われ方がよく分からないという状況は、あってはならない」と話す。この考えに基づき、イーバンクに強く経営改善を求めたのも、筆頭株主の立場としては理解できる。
ただし、黒字化を求める姿勢があまりに性急で、またライブドアが自社利益のみを追求するものと、イーバンクには映った。「出向社員が役員に対し、『イーバンクは誰のために働いているのか』と詰問する。『株主・社会・従業員のためだ』と答えると、『違う。我々のために働くのだ』という」(イーバンクの山田取締役)。
社会的な責任が大きい銀行業の性格上、一社の利益のためにのみ行動することはできない――というのが、イーバンクの反応だったようだ。
イーバンクの星崎副社長は、「完全買収ならともかく、筆頭株主になったことで、そんなに強く要求を受けるとは理解していなかった」と、見込み違いを認める。この両社の思惑のズレが、今回の騒動の根底にあるようだ。
今後、イーバンクが提携解消を求めたところで、ライブドアが保有する株式をほかの企業に売却するなどしない限り、提携は解消されない。「株をほかの企業に譲る気があるなら、われわれがあっせんすることは可能だ」と、イーバンクの松尾社長。しかしライブドアの宮内CFOは、「興味を示してくる企業はあるが、売る気はない」と明言した。
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