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» 2004年04月13日 12時23分 公開

UltraSPARC Vを捨てたSunが未来を賭けるのは……

UltraSPARC VとGeminiプロセッサの計画を中止したSun。その背景にある事情や新たなロードマップ、UltraSPARCブランドの今後の運命を同社幹部が語った。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 UltraSPARC Vプロセッサへの取り組みを打ち切るというSunの意外な決定は、低迷する企業の捨て鉢のコスト削減策か、あるいは同社が2002年のAfara WebSystems買収以来準備を進めてきた次世代のマルチスレッド、マルチコア「スループットコンピューティング」プロセッサへの自信ととらえられるだろう。

 UltraSPARC Vの死は、Sunが最近、同プロセッサに携わるエンジニアも含め、社員3300人(全体の約9%)をレイオフしたことで加速されたようだ。しかし同社のプロセッサ・ネットワーク製品担当デビッド・イェン氏によると、同プロセッサの開発中止は、同社がすべてをスループットコンピューティング設計に賭けていることを示しているという。UltraSPARC V(コードネーム「Millennium」)は、最初のスループットコンピューティングプロセッサが用意できるまでの応急処置として計画されていた。最初のプロセッサはネットワーク集約型で「Niagara」のコードネームを持ち、2006年初頭に登場する見込みだ。

 IDG News Serviceは、UltraSPARC Vと出荷間近だったSun初のデュアルコアプロセッサ「Gemini」の開発中止についてイェン氏にインタビューを行った。

 同氏によると、SunはUltraSPARC Vの打ち切りに伴い、AMDのプロセッサコアを組み込んだスループットチップといった新たな可能性や、UltraSPARCブランドそのものの終焉も検討する姿勢にあるようだ。

――GeminiとUltraSPARC Vの開発中止という決定に至った理由は?

イェン氏 手っ取り早く言うと、人々は当社のスループットコンピューティングの信念と構想に確信を持っているはずだということです。当社はこれに大きな確信を持っており、その開発を迅速化することにすべてのリソースを集中させたいと考えました。MillenniumとGeminiへの取り組みにはかなりの時間を費やしましたが、これら2つのプロセッサはやや従来的に思えます。当社は新しいCMT(チップマルチスレッディング)プロセッサが非常に有望であると確信しているため、それに投じられるリソースの量を最大限に増やしたいと考えています。

 中止した2つのプロセッサに悪いところがあったわけではありません。実際、これらはテープアウト(設計完了)しており、Geminiは完全に機能する段階にまで至っていました。しかしGeminiの対象分野には、非常に有能なUltraSPARC IIIiとUltraSPARC IIIi+があります。Geminiの開発をやめることで、製品の位置付けも多少やりやすくなるのです。

 Millenniumの対象分野には現行のUltraSPARC IVがあり、それにUltraSPARC IV+が続きます。その後RockとNiagaraシステムが登場します。実際、われわれはこのロードマップの方が良いと思っています。これが今回の(開発中止)決定の理由です。

――UltraSPARC VとGeminiでの性能向上の程度は、Sunの期待に沿わなかったということですか?

イェン氏 これらはいずれも、いわば第一世代です。GeminiはUltraSPARC IIコアを2つ備えています。Geminiは既に動作できる段階に入っており、シングルスレッドの性能にはある程度の競争力がある――UltraSPARC IIIiの性能に近い――というベンチマーク結果も出ています。デュアルコアなので、マルチスレッドのスループット型アプリケーションでは、場合によってはもっと性能は高くなります。

 ですが、これら(GeminiとUltraSPARC V)を搭載したシステムの製品化という点から投資の額を考え、性能向上を考えて、もっと明確な位置付けをしようと決めました。当初の方向に進まなかったのは、そうした理由からです。

 UltraSPARC V、つまりMillenniumの取り組みは(Geminiより)もっと早くに始まっていました。非常に高度で重要なプロセッサ設計だからです。ですがここに至って、UltraSPARC Vは第一段階をほぼ完全に終えた――つまり、設計を終えてテープアウトした――ものの、今後の前進を考え、もっとアグレッシブなスループットコンピューティング、CMTタイプのコンセプトが約束するものに目を向けた時に、UltraSPARC Vで達成されるであろう性能を、ほかのアプローチで達成した方がいいのかもしれないと考えたのです。

――GeminiとUltraSPARC Vの開発中止で、RockとNiagaraの出荷予定は早まるのでしょうか?

イェン氏 確かに出荷を早める後押しになるでしょう。これまでUltraSPARC Vに取り組んでいたたくさんの人員を、RockとNiagaraの作業に回せるのですから。

――RockとNiagaraの登場はいつ頃になりますか?

イェン氏 以前にも言いましたが、最初のNiagaraプロセッサ「Niagara 1」はおそらく2006年初頭に登場し、Niagaraシリーズの後続モデルとRockプロセッサがそれに続く予定です。

――それは昨年時の予定ですよね。ロードマップはどう変わりましたか?

イェン氏 もしも今回の決定で予定が早まることがなければ、これが確実なスケジュールです。

――UltraSPARC VとGeminiのプロジェクトから、スループットコンピューティングプロセッサに移動したエンジニアの数は?

イェン氏 200人以上を新しいプロセッサの計画に移しました。このため、来年度は追加のエンジニアを雇わずに済みます。

――今回の決定は、UltraSPARCの将来にどのような結果をもたらすのでしょうか? 現在のUltraSPARCはこれで死を迎えるのか、あるいは将来UltraSPARCプロセッサが投入されるのでしょうか?

イェン氏 これらの(Rock、Niagara)スループットコンピューティングプロセッサはすべてSPARC互換です。UltraSPARCの名称を使い続けるかどうかについての決定はまた別の話ですが、これらはすべてSPARCプロセッサです。

 確かに、Millenniumと呼ばれるプロジェクトは中止しました。このプロセッサは、登場時にUltraSPARC Vという名を冠する予定でした。当社は今、このプロセッサを中止して、もっと新しいスループットコンピューティングSPARCプロセッサに取り組んでいます。こうしたプロセッサの1つが登場したときに、まだその名前を使いたいと思っていたら、UltraSPARC Vという名称を付けてこのシリーズを続けるかもしれません。

――Sunは現在AMDと提携していますが、新しいマルチコアプロセッサの設計に当たって、別のタイプのコアアーキテクチャを採用することは検討されますか?

イェン氏 AMDとはOpteron搭載システムで密接に協力していきますが、当社には1270億ドル以上に相当するインストールベースがあることを理解してください。バイナリ互換性を維持するのは当社の義務です。当社はこの取り決めを真剣に考えています。

 当社がスループットコンピューティングを採用するときには、少なくとも今の時点では、SPARC V9(UltraSPARCの基盤アーキテクチャ)と100%互換になります。ですが、あなたの言うことも正しく、すべての革新がSPARCに結び付くとは限りません。ですから、実際にわれわれは、競合他社がその方向へ向かうと考えています。

――結局、スループットコンピューティングプロセッサまたはシステムの基盤にAMD技術を採用する可能性は?

イェン氏 その可能性はありますが、特にこの場合はAMDも関わってきますので、当社側の準備ができ、双方の合意が得られるまではコメントできません。

――すべてのリソースをスループットコンピューティングに投じるのはかなりリスクが大きいように思えます。スループットコンピューティングがそのリスクに見合うと確信する理由は?

イェン氏 当社がこのようなことをするのは今回が初めてではありません。1994年ごろ、SMP(対照型マルチプロセッシング)は死につつあるという認識が広まり、皆はNUMA(非均等メモリアクセス)を提唱していました。しかしこのとき、当社はまだ(SMPで)かなりの基礎エンジニアリングが可能だと考えていました。SMPは適切なアーキテクチャであり、プログラマーにとって最も扱いやすいとの考えから、当社はSMP計画を継続しました。1996年の時点では、すべての競合他社がNUMAタイプのアーキテクチャに乗り換え、市場には当社の競争相手はいませんでした。6〜9カ月の間、市場で文字通り孤立状態を享受したのです。当社のサーバの基礎が本当に確立されたのがこの時期でした。自分の信じるものをただひたすら信じればいいのです。

 ではリスクはあるのでしょうか? 必ずあります。新たな革新を提案するときには、常にリスクが伴うのです。これまでとは違うものに取り組むわけですし、最初は実証されていないのですから。ですが、それがハイテク業界に生きる者の人生なのです。大事なのは、自分は正しいという自信があるか、その自信に見合うだけの力があるかということです。私は、当社にはそれがあると確信しています。

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