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MS・Symbianに対抗、Linux携帯の拡大目指す中国ベンダー

» 2004年11月01日 10時56分 公開
[IDG Japan]
IDG

 世界初のLinuxベーススマートフォン2機種を立ち上げた中国のE28が、今度は携帯端末メーカー向けに、Linuxを基盤としたソフト・ハード設計をライセンス供与する。

 「当社の技術を利用すれば、メーカーはわずか2カ月以内に独自のLinuxスマートフォンを投入できる」とE28のロジャー・カン会長兼CEO(最高経営責任者)は、先週独フランクフルトで開催されたLinuxWorldカンファレンスでの取材で語った。「われわれはLinuxを、MicrosoftとSymbianのスマートフォンOSに対抗するかなり強力なOSと見ている」と同氏は言い添えた。

 E28は、スマートフォン端末、リファレンスデザイン、アプリケーションソフトの設計・開発を専門に手がける。スマートフォンは、携帯電話とPDAの機能を兼ね備えたデバイスを求めるビジネスユーザーの間で急速に人気が高まっている。

 2003年9月、上海に本拠を置くE28は「e2800」モデルを投入し、揺籃期のスマートフォン市場を驚かせた。カン氏によれば、同モデルは「世界初の商用向けLinuxベーススマートフォン」であり、新興企業のE28が米Motorolaに先行した格好となった。Motorolaは2003年2月にLinuxフォン計画を発表、同年10月に「A760」を提供した。

 E28製品がMotorolaよりも若干早くユーザーの手に行き渡ったのは偶然ではない。カン氏は2002年にE28を立ち上げる前、Motorolaのアジア地域担当パーソナルコミュニケーション部門社長を務めていた。

 e2800モデルの後、ビデオ機能を備えた折り畳み型の「e2800+」モデルが今年7月に投入された。

 カン氏によれば、E28は自社のLinuxソフト・ハードのリファレンスデザインをライセンス供与すると決定、これらを採用した製品でLinuxスマートフォン市場の拡大を目指すとしている。

 もっとも、これを実現するのは難題かもしれない。Strategy Analyticsの上席アナリスト、ニール・モーストン氏は次のように話す。「Microsoftが(Windows Mobile)Smartphoneソフトで抱える問題と同様、Linuxをサポートする企業も、主要ベンダーの携帯機器に自分たちのOSを搭載する難しさに直面することだろう。Symbianはこの市場で既に極めて強固な足場を築いている。それは主にNokiaのおかげだ」

 世界最大の携帯電話機器メーカーNokiaは、Symbianの最大株主。Symbianには、韓国Samsung Electronics、独Siemens、Ericssonとソニーの合弁企業Sony Ericsson Mobile Communicationsなどの携帯大手が出資している。

 Strategy Analyticsの推定によれば、世界市場におけるLinuxスマートフォンのシェアは2009年までに約5%程度になる見込み。「少なくともあと数年、Linuxはニッチ市場であり続ける――比較的大きなニッチではあるが――中国、そしておそらく日本での普及率が最も高くなるだろう」とモーストン氏。

 今年に入って、NTTドコモは、LinuxおよびSymbianを基盤とする先進的な端末開発を支援する目的で、携帯電話機メーカー6社に援助金を提供すると語った。

 E28のプラットフォームはあらゆる規模のメーカーを対象としており、カン氏によれば、ある「大手ブランド」ベンダーが間もなくライセンス契約に署名するという。

 E28のソフトプラットフォームには、電話機能、メッセージング(ショートメッセージサービス、マルチメディアメッセージサービス、電子メール)、インターネットブラウザ、マルチメディアシステム(MP4、3GP、H.263など)、多言語手書き認識、Windows PCとMac OS Xシステムとのデータ同期化などのアプリケーションが含まれ、既に入手可能となっている。

 ハードリファレンスデザインは現行のE28製品に基づくもので、詳細な図解、部品表やその他の設計文書が提供される。具体的な製品については2005年1〜3月期に発表される予定。

 E28は年内に、Linuxベースの高性能マルチメディアスマートフォン「e2808」を米国と欧州市場で投入する計画だ。来年初めには、高度のセキュリティを求めるユーザー向けのLinuxスマートフォンを予定している。

 なぜLinuxなのか? カン氏はいくつかの理由を挙げた。まずLinuxはプロプライエタリではなく標準ベースのオープンシステムであるため、迅速かつ高度な革新が期待できるという。

 またLinuxは組み込みシステム用にカスタマイズすることも可能だ。「われわれ自身がコードを管理するため、自由にカスタマイズしてソフトを顧客の特定ニーズに最適化できる。これは、非公開のソースコードに対するオープンソースソフトの大きな優位点だ」とカン氏。

 このほか、開発コストが低いこと、セキュリティが優れている点をカン氏は利点として挙げた。

 なおE28は、組み込みLinuxを主要スマートフォンOSとして推進する新しい業界団体Linux Mobile Allianceの設立メンバーでもある。

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