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「評価されない」悩めるエンジニアへ──来年は“まず一歩前へ”Japanese Engineer,Stand Up Please!

» 2004年12月20日 08時11分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 2004年、国内はデジタル景気にわき、新製品や新サービスが次々にリリースされた。IT企業の多くが業績を伸ばした一方で、企業で働くエンジニアはこれまで以上にタイトなスケジュールでの開発を余儀なくされ、長時間の残業に悩まされることに。また、ここ数年、年功序列に代わって成果主義が浸透しはじめたが、技術的な知識のない文系上司からの評価に不満を持つエンジニアも多い。

 リクルートのエンジニア向け転職情報サイト「Tech総研」が行った調査によると、転職するなら働いてみたい企業の条件として最も多く挙がったのが「技術力や仕事を正当に評価してくれる」(52%)、第2位が「労働時間、休日面でゆとりがある」(47%)だった。

 エンジニアが正当な評価やゆとりある生活を手に入れるにはどうすればいいのだろうか。Tech総研の前川孝雄編集長に聞いた。

「美人OL激白!エンジニアのココが好き☆キライ」「上司に遠慮せず、“今日こそ残業しない!”術」など泣かせる特集が多いTech総研

上司が技術を理解できないのは、仕方ない

 「上司が技術オンチなことは仕方がないこと」と前川編集長は言う。文系管理職だけでなく、理系技術者出身の管理職でも最近の技術が分かっている人はまれ。技術革新のスピードは速く、40−50代の上司が現役だったころの知識や経験が全く役に立たないことも多い。「分かってくれるはずと思わないことが重要」。

 技術が分からない上司に正当に評価してもらうには、コミュニケーションを密にし、自分の仕事を理解してもらう努力をする必要があるという。上司と毎日話をするのが一番の近道だが、顔を合わせる機会が少なければ、メールでもチャットでもいい。

 「営業職の同僚と違って口がうまくない」とコミュニケーションに苦手意識を持つエンジニアもいる。しかし、仕事の成果を分かってもらうのに必要なのは、口のうまさではなく論理的で筋道立った説明。これは理系エンジニアの得意分野だと前川編集長は言い、コミュニケーションに対する苦手意識をなくして積極的に上司にぶつかってほしいとした。

苦しいのは時間がないから?

 要求される開発はどんどん高度になる一方、開発時間は短縮し続けるという現状で、毎日残業が当たり前というエンジニアは少なくない。Tech総研の調べによると、6割のエンジニアが週10−20時間残業しており、30時間以上のエンジニアも2割いる。また、今後仕事時間が増えると予想しているエンジニアも6割いた。

 残業に追われる毎日に疲れ、なんとかして余暇を増やしたいと考える人は少なくない。しかし、前川編集長によると、優秀で高給なエンジニアほど労働時間が長くなる傾向にあり、キャリアと労働時間はトレードオフの関係。キャリアを犠牲にせずに、労働時間を減らすのは難しい。

 「エンジニア悩みの本当の原因は、時間不足ではないのではないか」と前川編集長は視点を変える。「『モーレツサラリーマン』という言葉が流行した高度成長期、サラリーマンは今のエンジニアと同等か、それ以上長時間働いていたが、今ほど大きな不満、不安はなかった」。

 高度成長期は、頑張れば頑張るほど会社が大きくなり、出世できると信じて頑張れたが、先の見えない現代では、毎日あくせく必死で働いても、中長期的な見通しが立たない。不安の根源はここにあるという。

来年は“一歩前へ”

 将来への不安を解消するのは難しい。変化のスピードが劇的にアップした今、数年前まで通用していた処方箋も役に立たない。「ほんの5年前までは、キャリアに悩む人に対して『5年後、10年後の自分の姿を想像して今の自分の能力をたな卸しし、足りないものを一つ一つ埋めていけばいい』とアドバイスしていたが、今は5年後すらどうなるか分からず、将来像は描きにくい」。

 解決策は、とにかく一歩進んでみることだという。「なんとなく面白そうとか、ハッピーになれそうな匂いがしたら、まずはそこに向かって一歩進むことが大切。少しでも前に進めば視界が変わり、新しい人に出会ったり、新しい才能に気づいたりする」。

 この処方箋は、前川編集長の経験則に基づいている。「キャリアを極めた人に何人もインタビューしたが、はじめからビジョンや目標があった人はまずいない。やりたいことを、がむしゃらに頑張ってきたら、知らない間に今の位置にたどり着いていたという人がほとんど。10年後のあるべき姿を求めて自分を追い詰めないほうがいい」。

前川編集長

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