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» 2004年12月24日 18時43分 UPDATE

ITmedia News 2004 Top10成熟の始まりの始まり

年間ランキングではWinny関連記事が目立つ。多かれ少なかれ、読者は“当事者”として問題に向き合っていたようだ。

[ITmedia]

デスク:こうして見ると、今年はWinny開発者逮捕・起訴の衝撃がやはり大きかったね。

記者A:5月10日の早朝、通信社の「逮捕へ」の一報が流れて、連休ボケが続いていた頭を吹っ飛ばされた。ネットでは議論が百出し、考察のテーマは著作権のあり方やP2Pという新技術のインパクト、ネット文化論にまで及んだ。

デスク:Winnyを実際に使っていたかどうかにかかわらず、ネットユーザー自身にとって身近な世界が最先端の社会問題としてクローズアップされていたわけで、その分ユーザー一人ひとりが“当事者”として真しに考えざるを得なかっただろうと思う。今年ブームになったBlogだが、その真価が早速試されたという点でも記憶されるだろう。

記者A:少なくともネットでは、立件自体に批判的な意見が多かった。特に批判が集まった「著作権法違反のほう助」容疑については、公判で弁護側はこれを否定して全面対決中だ。確かに、内偵中と噂されていたころは「仮に立件しても公判維持が難しく、逮捕にまでは至らないのでは」という見方があったんだが………。

デスク:当局が開発者逮捕に傾いたのは、Winnyを舞台にした一連の捜査資料流出が大きいとする見解がある。逮捕した京都府警に加え、私が記者として以前に担当していた小さな警察署からも捜査資料が流出して大騒ぎになった。Winnyに限らないことだが、ネットに一度放たれたデータを完全に消し去るのは極めて難しい。つまりネットでは、警察の身内が起こした“恥”が半永久的にさらされ続けるということだ。そして警察は恥をかくのを何よりも嫌う。

記者A:9月1日に開かれた初公判は異様な雰囲気だった。地元の記者も「京都地裁が新しい建物になってから、こんなに人が集まったのは初めてでは」と驚いていた。

デスク:とにかく注目度は高い裁判だ。新技術と社会との摩擦が直接裁かれるケースはそう多くはない。初公判後の会見には開発者自身が出席して起訴の不当性を訴えていたが、今度は年明けにも開発者自らがWinnyを語った本が出版されるという。

記者A:年間トップもWinny事件の“余波”とでも言うべき「2ちゃんねる、著作権を侵害中?」だった。

デスク:この件を見ても分かるけど、それほどにネットの住人はナイーブになっていたということだよね。著作権についての議論を分かりにくくしているのは、財産権である「著作権」と、一身専属の人格権である「著作者人格権」がごっちゃになって考えられてる場合が多いことだ。

記者A:この1年で特に強く感じたが、読者の関心が技術そのものよりも、技術とその周辺の社会的側面に移ってきている。「IT」について単に技術を語っていればいいというフェーズはとうに終わったように思う。もちろん以前もそういった面はあったが、今年は鮮明になったということだ。

デスク:“幼年期の終わり”とでもいうのかな……自分の周囲を見ても、「とりあえず2chに参加して騒げば楽しい」という感覚はもうなくなってきている。匿名掲示板という場が続いている一方で、顕名(それがハンドルであれ)した「個性」の主張が基礎になっているBlogやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が流行した。そこに書き込まれている内容を見ても、「ホームページ作り」や「出会い系」のころとは感触が違う。いろんな所でいろんな立場の人が、自分とネットと社会との関わり方を自分ができる方法で模索していた1年だったように思う。

記者A:マズローの欲求段階説的に考えると、個人レベルではコンピューティングパワーと通信速度には十分満足したから、次は社会的欲求や自我、自己実現へと関心が移りつつあると……。

デスク:しかしまだ「成熟した」という感じはない。成熟の始まりが始まったというべきか。

記者A:ITと社会との接点か。プロ野球騒動とかね。

デスク:業界の景気が良くなってるってのは実感したね(苦笑)。

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