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SNS「mixi」が支える恋――オタクとキャリアの物語(3/3 ページ)

» 2005年06月08日 15時40分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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オタク知識に惹かれるキャリア

 アルテイシアさんによると、キャリア女性には隠れオタクが少なくない。「私も、ハードスペックはキャリアだけど、内面はオタク」。特にマスコミには多く、「高校時代にガルマのコスプレして同人誌売ってた美人新聞記者も知ってます。でもオタクと出会う機会がないから、結婚相談所に駆け込んだりするんです」――オタク話ができ、オタクとの付き合いたいと考えている女性は、実はたくさんいそうだ。

 豊富なオタク知識は、そんなキャリアを“落とす”武器にもなる。アルテイシアさんは、59番さんの知識の正確さ・豊富さに惹かれたという。「例えば、普通の人でもキン肉マンやテリーマンの話はできます。でも『ベンキマンの年が2000歳』とか、そういうことを話せる相手はいませんでした」

 「ガンダムも、好きと言いながら、すごく基本で間違えてる男性はたくさんいます。『オレ、アレが好きやねん。戦車みたいな『ガンキャノン』――ってガンタンクやんけ! とか」。アルテイシアさんは、そんな男性を信用しない。

 「『なんだったけ、あのハモンさんが乗っていたやつ?』ときいて『キュイ』って答えてくれる人は、頼もしいし、信用できますよね」

キャリア女性は「敵認定」?

 「オタクとキャリア女子がひっつけば、少子化問題が一気に解決しますよ」とアルテイシアさんは言うが、たとえ相性がよくても、出会う機会がなかなかない。出会えたとしても、お互いに対する偏見や思い込みが、コミュニケーションの邪魔をする。

 例えば、アルテイシアさんは59番さんに「キャリア女性は無条件に敵認定」と言われてショックを受けたという。

 59番さんは「なぜこの世には、美人でモテてカネもある人種と、俺みたいなモテない貧乏な人種がいるんだ」という考え方だったという。この思いはやがて憎しみに変化。アルテイシアさんと会話していても『モテてカネのある私が、下々の者の相手をしてやってる』くらいにしか思われてない――と思っていたそうだ。

 アルテイシアさんは、59番さんのことを見下したことはない。59番さんの自信のなさが、自分の内側に“敵”を作ってしまっていたのだろうと分析する。

 「でも、その気持ちは分かります」とアルテイシアさんは言う。高校時代、今よりも8キロ太っていたころ。「イケてる男子校生を見ると怖かった。『デブって言われたらどうしよう』『足太いって思われたらどうしよう』って思っていました」――自信のなさから「絶対見下されている」と思い込み、「敵認定」してしまう。「これは仕方がないことだと思います」

「敵認定」を回避するには

 「敵認定」の牢屋から脱するカギは、“見た目”だという。アルテイシアさんは18歳のころ、8キロダイエットしておしゃれしたら、とたんにモテるようになり、またたくまに59人から告白を受けたという。

 「人は見た目から入るのは事実。これは受け入れるしかないと思います」――アルテイシアさんは、この理論を実験で検証した。服装を変えて同じ道を歩いてみたのだ。「ワンピースを着れば4人にナンパされました。ジーンズなら2人に減り、すっぴんなら1人。白いスーツを着てたら、ラウンジにスカウトされました」。見た目だけで、人は人を判断する。

 見た目はすぐに変えられる。「GAPでひとそろい買って、美容院に行けば、1日で変われます」

 また「デートで何を話していいか分からない」と思うなら、地道に会話の練習をするといいという。「バーのマスターでもいいし、お店のおじさんでもいい。誰でもいいから話してみるといいと思います」。実際、59番さんは、自分が会話が苦手と認識し、会話の練習をするためにバーに通いつめていた。

 会話の練習といっても、別にオシャレな話はしなくていい。会話のキャッチボールができれば、それでいいのだ。「『負け犬の遠吠え』には『オタクとはワインを飲みながらポルチーニ茸の話ができない』と書いてあったけれど、キノコの話なんか何が楽しいか分かりません。ガンダムの話をしてた方がよっぽどいい」――そんな女性も、確実にいるのだ。

 「出会いがない」と嘆くキャリアウーマンも、オタクに偏見を持つ人が少なくなく、これが“本当に合う人”との出会いをさまたげる要因になっているという。「お互いに、レッテルで判断すべきではないと思います。話してみないと分からないんだから」

「電波男」との不思議な一致――

 アルテイシアさんの発言は一部、オタクの恋愛観を描いた「電波男」(本田透著、三才ブックス)とそっくりだった。

 例えば電波男も「ポルチーニ茸について語るのが『恋愛』というのは、女性ファッション誌の幻想」などと喝破。負け犬女性のオタクに対する偏見や、ファッションとして“恋愛”の空虚さを指摘している。

 しかしアルテイシアさんは、電波男を読んだことがない。偶然、全く同じことを考えていたのだ。

 やはり、オタクとキャリアは、相性がいいのかもしれない

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