韓国総人口の約4分の1に当たる約1300万人が利用するソーシャルネットワーキングサイト(SNS)「Cyworld」(サイワールド)がこの10月、日本に本格上陸する。韓国での成功の背景や、国内SNSで独走を続ける「mixi」への対抗策を、運営元であるSKコミュニケーションズジャパンのイ・ドンヒョンCEOに聞いた。
韓国Cyworldのスタートは1999年。人気に火がついたのは2001年になってからだ。同年スタートしたミニホームページサービス「ミニホムピー」が大ヒットし、ユーザー数やアクティブ率で他サービスを一気に抜いた。
韓国のコミュニティーサービスはそれまで、掲示板などで複数人で作り上げるタイプのものが主流。個人が情報発信・自己表現できるミニホムピーは新しく、韓国社会の変化――集団主義から個人主義への推移――の流れともあいまって、ヒットにつながったという。
登録情報の信頼性の高さが、人気を後押しした。韓国Cyworldは、住民登録番号と実名参加が必須。現実社会の人間関係をそのままネットに持って行きやすく、なりすましも不可能だ。
確実な収益もある。韓国Cyworldの1カ月当たりの売り上げは約8億円。その1割を広告が、残り9割をアバターやスキンといったデジタルアイテムが占める。記念日などに友人にデジタルアイテムをプレゼントする文化も定着しており、売り上げは伸び続けているという。
ただ、韓国のユーザー数は頭打ち状態。これ以上の伸びは望みにくいため、海外に目を向けた。まずは中国、アメリカ、そして日本に進出する。ブロードバンドによる常時接続が浸透し、ブログやSNSも普及しつつある日本は「コミュニティーサービスのファーストステージにいる」(イCEO)。拡大しつつあるニーズをすくい取り、成長軌道に乗せたい考えだ。
国内SNSは、100万人近くが参加する「mixi」が独走状態にあり、それ以外は軒並み苦戦を強いられているのが現状。また、ブログも普及しているため、簡単に更新できるWebサイトへのニーズもそれほど高くない。
Cyworldは“オープンでありながらクローズド”な点で、ブログやmixiとは違った魅力をアピールできるとイCEOは話す。
韓国Cyworldは、ミニホムピーのトップページは誰でも見られる完全オープン。しかしアルバムや日記、掲示板などそれぞれのコンテンツには、閲覧制限をかけられる。例えば、Aさんはトップページのみ、Bさんはトップページとアルバムを、Cさんはトップページとアルバムと日記を、Dさんは全コンテンツを見られる――という風に、ユーザーごとに見せるコンテンツを選択可能だ。
「トップページは、ユーザーの顔のようなもの。現実社会で道を歩いていると、顔を見られてしまうのと同じだ。しかしプロフィールや日記などは、親しさに応じてどこまで見せるか自分で決められる」――コンテンツを誰でも見られる完全オープンのブログや、会員以外は全く見られない完全クローズドのmixiと異なり、現実社会に近い感覚で利用できるという。
招待不要で利用できるため、一部の友人同士だけでクローズドコミュニティーをつくることもでき、これもmixiにはない魅力だという。
日本版の仕様はまだ固まっていない。6月13日にオープンした日本語β版を先進的なユーザに使ってもらって改善点を募りつつ、マーケティングリサーチをしながら最終仕様を決めていく。携帯電話向けサービスも視野に入れ、日本人に最も受け入れられやすい形で正式リリースする計画。日本版では実名登録にもこだわらない。
収益は、韓国と同様、アバターなどのデジタルアイテムから得る予定。国内ではデジタルアイテム購入がそれほど一般化していないが、イCEOは「受け入れられるのも時間の問題」と楽観的な姿勢だ。「韓国でも、当初はデジタルアイテム販売がうまくいくか疑問視されていた。しかしCyworldのデジタルアイテムは売れ続けている」(イCEO)
当初のターゲット層は20代の女性になりそうだ。コミュニケーション欲求の強い若い女性層を取り込み、徐々に周辺層に広げていく。大規模なプロモーションも予定しているが、「ほんの数秒のテレビCMなどでは魅力を伝えるのが難しい」(SKコミュニケーションズジャパンのファン・ソヨンさん)とし、オピニオンリーダーに使ってもらって口コミでユーザーを増やすといったプロモーション戦略を考えている。
今年中に100万人のユニークユーザー(会員数50〜100万人程度)獲得を目指し、ローカライズや機能改善を続けていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR