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米シンクタンク、独禁法訴訟でMSの援軍に

» 2005年09月06日 16時32分 公開
[IDG Japan]
IDG

 政府の規制への反対キャンペーンを展開している米国のシンクタンク3団体が、Microsoftが欧州連合(EU)の独禁法裁定に対して進めている控訴審において、Microsoftを支持する弁論を行う許可を求めた。これら団体のうち国際知的財産研究所(IIPI)は、Microsoft社員が理事会に参加している、残る2団体は進歩・自由協会(PFF)とInstitute for Policy Innovation(IPI)だ。

 3団体は、EUの独禁法担当局である欧州委員会の裁定に対するMicrosoftの控訴審に介入することを求めた。同委員会は昨年、MicrosoftがPC OS市場における独占力を乱用し、メディアプレーヤーソフト、ワークグループサーバソフトの市場を掌握しようとしたと判断した。

 Microsoft反対派はこれら団体の請求を批判している。これは、訴訟への介入を求める「請求権の乱用だ」とイタリアのミラノに住む弁護士カルロ・ピアナ氏。同氏はこの訴訟でMicrosoftに反対するFree Software Foundation(FSF)Europeの代理人を務めている。同氏は、裁判所に不要な仕事をさせないために今回の請求を棄却するよう要求した。

 独禁法訴訟に関するEU法の下では、第三者が欧州第一審裁判所での審理において自身の見解を述べたいと請求することができる。それを許可するかどうかは、裁判長が決定する。許可を得るには、3団体が控訴審や独禁法裁定により影響を受けるということを裁判長に納得させなくてはならない。

 この3団体は、「欧州委員会の裁定が支持されれば、世界中で適切な保護を損なうことになるため、自分たちには見解を述べる資格がある」と主張したのかもしれないとピアナ氏。

 現時点で、控訴審での弁論を認められている関係者は、欧州委員会側はRealNetworks、Software and Information Industry Association(SIIA:750社以上の企業を代表する団体)、European Committee for Interoperable Standards(ECIS)、FSF Europe。Microsoft側はAssociation for Competitive Technology(ACT)とComputing Technology Industry Association(CTIA)。

 MicrosoftはIIPIとつながりがある。IIPIの理事の1人、マーシャル・C・フェルプス氏はMicrosoftのコーポレート副社長兼知財担当顧問弁護士で、同社の政府問題担当マネジャー、スーザン・マン氏はIIPIのWebサイトにアドバイザーとして載っている。

 IPIは2004年12月に、欧州委員会のMicrosoftに対する裁定を「不合理」とする記事を公開した。この記事はIPIのジョージ・ピーラー氏の発言として、Microsoftにメディアプレーヤーを搭載しないバージョンのWindowsを提供させるという欧州委員会の決定は、冷蔵庫のメーカーに冷凍室と製氷器と冷蔵室を別々に販売させるようなものだと伝えた。

 PFFのDigital Age Communications Actに関する諮問委員会のメンバーには、米司法省対Microsoftの独禁法訴訟でMicrosoft側に立ったC・ボイデン・グレイ弁護士がいる。グレイ氏は法律事務所Wilmer, Cutler & Pickering, Hale and Dorrのシニアパートナーで、この訴訟に関してMicrosoft支持の姿勢を公に表明している。同氏は7月に、ブッシュ米大統領によりEUへの新しい米国大使として指名された。

 グレイ氏が大使に指名されたことについて、FSF Europeのジョージ・グレーブ氏は、Microsoftの独禁法訴訟の「傭兵」が選ばれたことは、「誰が真に政治力を持っているかを明確に物語っている」と語った。同氏は欧州委員会に対し、これまでの路線を変えず、「米企業の利益が欧州の消費者や経済の利益を抑える」ことを許さないよう求めた。

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