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テレビ市場も二極化 「違いが分かる」層に絞るパイオニア

» 2006年04月19日 19時56分 公開
[ITmedia]

 パイオニアは4月19日、PDPとしては世界初となるフルHD対応50V型モニターを6月上旬に発売すると発表した。先行していたはずのPDPやDVDレコーダーなどが不振に陥り、前期は最終赤字に転落する見通しの同社。テレビ市場の二極化に合わせ、今後は画質や音質などで「パイオニアらしさ」を訴求できるユーザー層にターゲットを絞って売り込む。

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 新製品「PDP-5000EX」(税込み105万円)は同サイズPDPとしては初となるフルHD(1980×1020ピクセル)に対応し、デジタルハイビジョンや次世代DVDの精細な表示が可能だ。「フルHDのリファレンスモデル」を目指し、テレビチューナーなどの回路を省いた表示専用機に徹した。

 フルHDパネルでは高画素化する分、同サイズのXGA(1024×768ピクセル)パネルと比べ、1画素の面積が半分になる。このため輝度が低下するのが課題だったが、独自の「高純度クリスタル層」を導入し、発光効率を向上させるなどしてカバー。カラーフィルターの改善でNTSC比107%の色域再現を実現するなど、高画質化技術をふんだんに盛り込んだ。

 地上デジタルチューナー内蔵の50V型テレビ「PDP-507HX」(同60万円)、42V型「PDP-427HX」(同48万円)も発表。3製品ともサッカー・ワールドカップドイツ大会に合わせて6月上旬、世界同時に市場投入する。

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 「テレビユーザーの二極化が進んできた」──同社の安田信治常務・ホームエンタテインメントビジネスグループ本部長は、テレビ市場が(1)価格を重視する層と(2)付加価値を重視する層に分かれてきたと話す。価格重視層は従来テレビからの買い換えが中心だが、付加価値重視層では大画面やホームシアターを楽しみたいというニーズが強いという。

 価格重視層はボリュームは大きいが、製品価格の下落も激しく、コスト効率に優れる大手各社との体力勝負になりがち。パイオニアはこの層をねらわず、40インチ以上の大型製品へのニーズが高い付加価値重視層にターゲットを絞る。

 今回の新製品投入に合わせ、高音質スピーカーを内蔵したラックシステムを同時に発売。ホームシアターも同社製品で完結できるなど、AV専業メーカーとしての総合力をアピール。「違いの分かる顧客層に絞って高付加価値製品を展開していく」(安田常務)作戦だ。

photo パイオニアの中期商品戦略。今回の新製品の広告には歌手の元ちとせさんを起用

 パイオニアはNECのPDP事業を統合するなどして同事業の拡大を進めてきたが、不振に陥った2006年3月期は最終赤字に転落する見通し。人員削減を含む事業再編を実行する一方、海外のPDP販売が好調で赤字幅が縮小するなどの明るい兆しもある。

 同社の予測によると、世界の民生用PDP需要は2006年度の1140万台から、2009年度には2200万台に倍増し、うち76%に当たる1680万台が42インチ以上の大型製品。50インチ以上は580万台、うち25%にあたる150万台がフルHDになると見ている。おう盛な需要を取り込み、同社は台数・金額ベースで市場シェア20%弱の獲得を目標に掲げている。

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