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PDP一部縮小、アクティブ有機ELは撤退――パイオニアが事業再編

» 2005年12月08日 20時50分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 PDPやDVDレコーダーの不振で業績が急速に悪化したパイオニアは12月8日、経営再建策を発表した。PDPのOEM生産を縮小するほか、アクティブマトリックス型有機ELから撤退。世界2000人の人員削減と社内体制の改革も行い、来期の営業黒字化を目指す。

 来年1月に社長に就任予定の須藤民彦副社長は同日、都内で会見し、「売る力と作る力のバランスが取れていなかった」と業績悪化の原因を分析。「パイオニアのスローガン『sound、vision、soul』に立ち返り、パイオニアらしさを発揮したい」と話し、画質や音質の高い高付加価値な製品作りに注力したいとした。

 同社は同日、2006年3月期連結業績予想(米国会計基準)の下方修正も発表した。リストラ費用を積み増したため、最終損失は前回予想時の240億円から870億円に拡大した。

photo 来年1月に新社長に就任する須藤民彦副社長(左)と、伊藤周男社長

PDPはXGA以上の高精細パネルに注力

 まず社内組織を抜本的に見直す。1月1日付けでカンパニー制は廃止し、代わってPDPやDVD、ホームオーディオを統合した「ホームエンタテインメント」と、カーナビなどを手がける「モーバイルエンターテインメント」の2つの事業部制に再編する。

 「ホームエンタテインメント」事業部のうち、業績悪化の最大要因となったPDP事業は、販売数量が変動しがちなOEM事業を縮小し、自社ブランド販売に集中する。PDP生産全6ライン(年間生産能力110万台)のうち、新モデルへの切り替えに合わせて1ラインを休止し、さらに追加も検討する。

 今期のPDP生産見込み64万台に対し、来期もPDP需要は伸びると見ており、今期の40〜50%増のペースで生産する計画だ。来期初めにも投入予定の50型フルHDモデルを中心に(関連記事参照)、特にXGA以上の高精細パネルに注力。ホームオーディオへの取り組みを強化するのに合わせ、PDPとDVDレコーダーやAVアンプなど自社製品との連携も強める。

 須藤副社長はPDP事業の方針について、まず生産をスリム化し、販売力とのバランスを取った上で「どこかでもう1回チャレンジしたい」と話し、「ラインの閉鎖やPDPからの撤退は考えていない」とした。

アクティブ有機ELは「収益のめどたたず」

 一方、次世代ディスプレイとして取り組んできた有機ELは、アクティブマトリックス型については「収益化のめどが立たない」として量産を中止。東北パイオニアがシャープなどと設立した有機EL合弁企業・エルディスは解散する。既に実績があるパッシブマトリックス型は、自社製品への採用拡大や新規顧客獲得に努めていく。

 DVDレコーダーは、欧米で販売しているHDDなしの低価格モデルの自社開発から撤退するほか、他社との協業・提携を進めて開発コストを抑える。PC用ドライブは、高付加価値なノートPC用スリム型とDVDレコーダー用の外販に注力する一方、開発の軸足をBlu-ray Discに移す。

 「モーバイルエンターテインメント」事業部は、最大手のカーオーディオ・カーナビで利益を堅持・拡大していく。カーオーディオは伸びが顕著なBRICs地域、カーナビは普及率が1けた台の海外市販市場と、それぞれ海外市場で攻勢を強める作戦だ。OEM事業でもカーディーラーオプション市場への取り組み強化する。

国内600人の人員削減も

 経営の効率化も断行する。2事業部制への再編に伴い、従来は各カンパニーが持っていた管理・間接部門を本社に統合。世界各地の生産拠点の統廃合に加え、国内600人を含む約2000人の人員削減に踏み切る方針で、既に労組に申し入れた。役員数も減らす上、役員報酬のカット幅を最大25%に拡大。11月からは管理職給与の一部カットも実施した。

 今期連結業績予想の修正は、構造改革費用320億円、アクティブ型有機ELからの撤退による持ち分法評価損230億円などを計上したため。売上高7700億円、営業損失250億円は前回予想時から変えていない。

 業績悪化の責任を取って来年1月1日に退任する予定の伊藤周男社長は「顧客満足を追求する経営の方向性自体は間違っていなかったと思うが、市場環境の変化への対応が遅れ、業績が悪化したのは残念」とコメント。PDPの価格下落は当初の予想を大幅に上回ったと述べた。

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