プロセッサメーカーの米Intelは、ハッカー対策、電話での通話、そして将来的にはテレビ番組のキャプチャなど、PCの機能強化にソフトウェアを使用する計画を検討中だ。
Intelは4月24日、セキュリティと管理機能を強化した新しい技術ブランド「vPro」を発表したが、同社幹部によれば、同社は現在、PCに仮想アプライアンスを追加するための標準的手法の確立を目指した取り組みを検討している。仮想アプライアンスとは、仮想パーティション内の独自の小型OS上で動作する、特定の機能向けに設計された専用のソフトウェアアプリケーションのこと。
この取り組みにより、PCで仮想化技術(コンピュータを分割し、複数のソフトウェアを実行できるようにする技術)を利用する方法が様変わりすることになるかもしれない。企業や個人ユーザーだけでなく、メーカー各社までもが、PCに仮想アプライアンスを好きな数だけ追加して、仮想化技術により、セキュリティを強化したり、通信機能を追加したり、あるいはパーソナルビデオレコーダーなど各種のエンターテインメント機能を追加したりできるようになるからだ。
現行の仮想化技術では1台のPCで同時に複数のOSを実行することができるが、Intelの新しいアプローチはこうした従来の手法よりも人気を集めるかもしれない。
また、このアプローチはPC分野における仮想化技術の採用を加速することにもなりそうだ。今のところ、PCで利用できる仮想化ソフトウェアは選択肢が非常に限られている。
Intelのデジタルオフィスプラットフォーム部門担当ディレクター、マイク・フェロン−ジョーンズ氏は次のように語っている。「この仮想アプライアンスモデルはOSを1つ搭載し、ユーザーはそのOSとやり取りする。そして、組み込みアプライアンスで別個にパーティションが設けられる。その組み込みアプライアンスは、非常に限られた機能セットだけを実行できる、特別に構築されたソフトウェアデバイスだ」
「つまり、ある1社のベンダーのところへ行けば、例えば、セキュリティ強化などのジョブを実行する上でアプライアンスに必要となる要素をすべてそこで入手できるようなものだ」と同氏。
vProデスクトップは2006年第3四半期のリリースが予定されており、VMwareのワークステーションやXenSourceのXenなどの仮想ソフトウェアを扱えるものとなる。だが、そうしたソフトウェアを実際に使う企業は概して少ないだろう、とフェロン−ジョーンズ氏は語っている。
同氏は、複数のOSを必要としているPCユーザーは、Intelのような企業においてですら、おそらく全体の5%にも満たないと予想している。なぜなら、仮想ソフトウェアのコストや、追加のOSおよびアプリケーションのコストを考えると、そうしたシナリオのコストはすぐにも膨れ上がるからだ。
「仮想アプライアンスのモデルは、それよりもはるかに低いコストに抑えられるよう設計されている」とフェロン−ジョーンズ氏。
Intelによれば、vPro PC向けに設計されたセキュリティ/管理アプライアンスはまず最初にSymantecとAltirisから提供される見通し。
だが、PC機能の増強のために仮想化技術や仮想アプライアンスの採用を考えている企業はIntelだけではない。PCメーカーのLenovo GroupとAstaroも、管理とセキュリティのための仮想アプライアンスを開発している。
Astaroは5月10日、VMware向けにSecurity Gatewayを発表した。同社によれば、同製品は世界で初めてネットワークセキュリティに特化した仮想セキュリティアプライアンスという。
Astaro幹部によれば、同アプライアンスは同社の各種アプリケーションをVMwareの仮想ソフトウェア上で実行することで、同社のハードウェアベースのセキュリティアプライアンスと同様の機能を提供する。
Astaroのマーケティング担当副社長アレックス・ネイハウス氏は次のように語っている。「これまでの多くの技術と同様、仮想化技術がメインフレームから始まり、ようやく最近になってx86 PCの世界に浸透しつつあることを考えれば、これは非常に自然な進化の流れだ」
「このアプローチをセキュリティに適用することで企業が実現できるメリットは非常に大きい。攻撃やインフラの変更により迅速に対応できるほか、購入すべきデバイスが減ることで、コストも削減できる」と同氏。
一方、Lenovoは近く、自社ソフトRescue and Recoveryを強化するための仮想アプライアンス風のソフトウェアモジュールを発表する計画だ。
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