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Dellの値下げ宣言に冷ややかなアナリストの反応(2/2 ページ)

» 2006年05月22日 11時14分 公開
[John G. Spooner,eWEEK]
eWEEK
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 それでもなお価格戦争が起きる可能性はある、と見る金融アナリストらは多い。

 マサチューセッツ州ボストンに本社を置くThomas Weisel Partnersのアナリスト、ケビン・ハント氏は5月19日のリポートの中で次のように記している。「Dellは今、過去に達成し得た成長を遂げることが難しい段階に突入している。向こう6カ月から9カ月間は以前の一貫性を取り戻すのに苦心すると懸念される。加えてDellのコメントは、向こう6カ月以内に価格戦争が起きる可能性が非常に高いことを示唆するものだ」

 ロリンズ氏とシュナイダー氏は、カンファレンスコールの中でこう説明した――利幅を広げようとしたDellの過去の取り組みは、競争相手に入り込む隙を与えてしまった。このため、テクニカルサポートを強化しつつコスト削減計画を加速させ、今年度の削減目標を30億ドルとするなど3分野に注力するプランで自らを建て直す必要がある。

 Thomas Weisel Partnersのハント氏は、「結論として、Dellは価格競争力のさらなる強化に向けて利益を再投資する可能性があり、業界全体にとってあまり好ましくない兆候である」と記している。

 Dellがサービス、サポート、品質の向上を図るまでに数四半期から数年かかるだろうことを考慮すると、新たな計画から短期的な成果は期待できないかもしれない、とカリフォルニア州サンフランシスコに本拠を置くCitigroupのアナリスト、リチャード・ガードナー氏はリポートに記している。

 「Dellによる値下げは主に米国と欧州の中小企業(および)ハイエンド顧客が対象だ。より積極的な値下げというDell経営陣の決断は理解できるが、こうした値下げの成果が(第2四半期の)売上高および1株当たり利益の見通し達成に必要な、短期的成長のレベルに及ばないことを懸念している」(ガードナー氏のリポートより)

 確かに、Dellの計画は長期的なものだとロリンズ氏は語っている。

 「これは成長できる位置に到達するための計画だ。タイムラインというものはない。低価格化に向けた動きは、ビジネスを戦略的に上向かせ、市場全体のダイナミクスに変革を起こすために必要と考える限り続ける。今年も、来年も、価格を引き下げていく構えだ」(同氏)

 同氏は次のようにも話している。「つまり私たちは、Dellの成長が鈍化した原因は利幅を広げ過ぎたことにあると言いたいのだ。当社はこの成長を加速させなければならない。価格は1つの触媒であり、このほかにも行動を起こさなければならない。まさに多面的活動だ」

 それでも「Dellの決算報告はさまざまなレベルにおいて、答えよりも疑問を多く投げ掛けるものだった」と、ニューヨークに本拠を置くBear Stearnsのアナリスト、アンドリュー・ネフ氏は5月19日のリポートの中で述べている。「Dellの戦略は矛盾しているように見える――例えば保証期間の延長とサービスの拡充を計画しながら保証コストを抑えようとしている。コスト削減の加速化を発表しつつも同時に顧客サービス/サポートおよび新製品/テクノロジーへの投資を増やしている」

 さらにネフ氏はこう続けた。「同社は『限定的な、しかし一律な』値下げを行って自社のブランドと価値命題を改めて宣言すると述べた。その一方で価格戦争を起こすつもりではなく、値下げは一手段にすぎないと主張する。より広い視野に立つと、同社の明確な方向性あるいは戦略の欠如が懸念される。しかも基盤である業界の状態はDellのビジネスモデルに好ましくない方向に向かいつつある――まず、PCの成長はDellの直販モデルがあまり浸透していない米国外の海外市場(チャネルの大部分は間接販売)がけん引しており、第二に、成長の原動力は主にコンシューマーだがDellはこの分野にあまりフォーカスしておらず、第三に、部品価格の下落ペースはもっと遅い」

 もっとも、誰もがDellの計画を懸念しているわけではない。

 バージニア州アーリントンに本拠を置くFriedman, Billings, Ramsey & Co.のアナリスト、クレイ・サマー氏の5月19日のリポートには次のように記されている。「Dellが(当初の第1四半期業績見通しを)大きく下回ったのは、同四半期の最初の2カ月を、米コンシューマー向けの高価なデュアルコアプロセッサ販売に費やしたからだ。米コンシューマーをめぐるこの競争にHPが勝利したのは、単に、より安価なシングルコアプロセッサ製品を競争力のある価格で販売したからである」

 これはつまり、DellはPC製品を値下げする必要がないかもしれないという意味だ。むしろ低い価格帯のさまざまなマシンを提供すべきだ、とサマー氏は記している。

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