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老いにむしばまれるNASAの深宇宙ネットワーク

» 2006年05月25日 18時53分 公開
[Larry Dignan,eWEEK]
eWEEK

 米ブッシュ大統領の宇宙開発構想には、そのほかの惑星はともかくとして、月と火星に人間とロボットを送り込むという計画がある。米会計検査院(GAO)によれば、そのためには、NASAは宇宙通信網を改修する必要がある。

 GAOは5月22日に発表したリポートにおいて、NASAの深宇宙ネットワーク(DSN:Deep Space Network)では、そうした宇宙開発を支えられないだろうと指摘している。DSNは、カリフォルニア州ゴールドストーン、スペインのマドリード、オーストラリアのキャンベラに設置されたアンテナで構成されている。

 GAOの結論は以下のようなものだ。NASAは新技術と新設備に向こう20年間で1億ドルを投じなければ、安定した地上通信の欠如によりネットワークの機能は妨げられることになる。

 「NASAのDSNは現行の作業については大半の要求をこなせるが、近い将来やその先のニーズまでは満たせないだろう」とGAOは指摘している。

 「DSNのシステムのインフラは老朽化しており、脆弱だ。重要な部品のなかには、40年以上も前から使っているものもある。そのせいで、日常の運転や重要なイベントの際にデータを集めそびれたこともある」とさらにGAOは続けている。

 一方、GAOによれば、NASAはボイジャー探査機などの古いプロジェクトと新規のプロジェクトを同時にやり繰りしているため、NASAのネットワークの新規顧客は容量の制約の問題にも直面している。

 そして、ブッシュ大統領の構想が実現すれば、同ネットワークにはさらにストレスがかかることになるだろう。

 DSNでは通常、年間35〜40件のミッションを処理しており、こうしたミッションで集められたデータはNASAのジェット推進研究所(JPL)に集計されている。

 GAOのリポートで指摘されたそのほかの問題には、以下のようなものがある。

  • DSNのゴールドストーン局は現在、老朽化に伴う保守/修理作業のために1週間に平均16時間ダウンしている。アンテナの中には、1950年代や60年代に設置されたものもある。
  • 2005年7月4日には、彗星探査計画「ディープインパクト」の重要なイベントの最中に、DSNマドリード局の70メートルの反射器のサブレフレクタの腐食が原因でシステムに予期せぬ混乱が生じた。
  • 2005年11月には、ネットワークの主要サーバのトラブルが原因でシステムは数時間に及び予期せぬ中断を強いられ、その結果、4つの研究プロジェクトのデータが相当量失われた。このトラブルにより、Stardust、Mars Reconnaissance Orbiter、Mars Odyssey、Mars Global Surveyorの探査計画で合計241分間分のデータが消失した。

 NASAにとって大きな課題は、将来のニーズに対応できるような通信網のアップグレード計画を整えることだ。今後の動向に注目しよう。

 GAOはリポートにおいて、NASAは向こう20年間の需要に対処できるよう、低空地球軌道と深宇宙の宇宙通信アーキテクチャの更新計画を提出すべきだと指摘している。

 この計画は、下院科学委員会と上院商務/科学/運輸委員会に2007年2月17日までに送られる予定だ。

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