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2chドメイン差し押さえ「現実的でない」と専門家 過去に例もなし

» 2007年01月15日 16時51分 公開
[ITmedia]

 「2ch.net」のドメインが仮差し押さえの対象になり、近く「2ちゃんねる」(2ch)の閉鎖もありうる、と1月12日に報道されたが、ドメイン名の差し押さえは実際に可能なのだろうか、また、差し押さえられた事例は過去にあったのだろうか。ITmedia Biz.IDで「ビジネスシーンで気になる法律問題」を連載している、南山大学法科大学院の町村泰貴教授(民事訴訟法・サイバー法)に聞いた。


 ドメイン差し押さえが可能かどうかと言われると、法理論的な可能性の問題であればYESでしょうが、実際上はさまざまな問題があり、現実的ではないでしょう。

 今回のケースがドメイン名の話で、ドメインが表象しているサイトの話ではないという前提で考えます。ドメイン名というのはレジストリ(2ch.netであればVeriSign)と登録者(2ch.netであれば、西村さんが代表者になっているMonster.Inc)との間の、一定の文字列の登録と独占使用権の付与を内容とする契約に基づいています。

 これを差し押さえるという場合、2ch.netをドメイン名として使用する権利を差し押さえるわけで、購入する人がいれば売れるという意味で財産的価値もありますし、理論的には可能です。日本法で言うなら、民事執行法167条に基づく手続にのります。

 しかし、現実には難しいというのは、まずVeriSignはアメリカの会社ですから、日本の裁判所に強制執行の管轄権があるかどうかが怪しいです。仮に日本の裁判所に管轄権があったとしても、VeriSignに差押命令を送達しなければなりませんから、これは困難で長時間を要します。日米の司法共助条約にのっとって外務省、在外公館、外国機関を通じるということになります。

 仮にアメリカの裁判所に管轄権があったとして、今回のケースでは、仮処分の間接強制制裁金を執行するということのようなので、その債権の効力がアメリカで承認される必要があります。それら手続面をクリアして、ドメイン名を差し押さえて差押債権者や第三者がドメイン名登録者たる地位についたとしても、2ちゃんねるの顧客吸引力が得られるわけではないですから、財産的な価値はあまりないでしょう。

 さて、ドメイン名を差し押さえて換価するという事例は、過去にはありません。ドメイン名の使用差し止めを命じる仮処分なら、外国では例がありますが、ドメイン名の財産的価値を執行の対象とする例は、私の知る限り、ありません。

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