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YouTubeをテレビで“ダラ見” はてな、Wii対応の動画サービス(1/2 ページ)

» 2007年02月16日 12時33分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 はてなは2月16日、YouTubeの人気動画をテレビのように見られる動画サービス「Rimo」(リィモ)を公開した。PCとWiiブラウザ向け新サービスで、アクセスするといきなり“番組”が流れる。気に入らなければチャンネルをプチプチ変えるか、「→」ボタンを押して次の番組にスキップすればいい。飽きたら「電源ボタン」を押して終了。Wiiブラウザを使ってテレビで見れば、まるでCMのないテレビ番組だ。

 YouTubeのAPIを活用して構築した。YouTubeで「Japanese」をクリックすると表示される日本語対応動画から、人気の高いものを抽出し、エンドレスに自動再生していく仕組みだ。チャンネルは1〜4の4つで、それぞれ、YouTubeの4つの動画カテゴリーに対応している。1が「Music」(音楽)、2が「Comedy」(コメディー)、3が「Arts&Animation」(アート&アニメ)、4が「Pets&Animals」(ペット&アニマル)だ。


photo Rimoの4chでペット動画を再生中。左下のリモコンでチャンネルや音量を操作できる。リモコンは普段は隠れていて、マウスを動かすと表示される
photo ネット接続したWiiがあれば、テレビで楽しめる。インタフェースはPC版とは若干異なる

 「疲れて帰った後、PCを操作して面白いものを探すのって面倒。気楽にダラダラ見られるサービスが欲しいよね。テレビみたいに」。こんな会話が発想の原点だった。

 ネットサービスといえば、ユーザーが能動的に情報を取りに行ったり、ぼう大な選択肢から選んだりしなくてはならないものがほとんど。例えばYouTubeなら、英語インタフェースを我慢して検索し、気になるものをクリックし、つまらなければ次を探し――数千万にものぼる動画から、面白いコンテンツにたどりつくまでにはかなりの労力がいる。

 その点、テレビは気楽だ。スイッチを入れれば自動的に番組が流れ、そのままダラダラ見ていられる。つまらないと思えばチャンネルを変え、何もなければスイッチを消す。必要な行動はこれだけで、文字入力も検索も必要ない。

 Rimoが目指したのは、このように誰でも気楽に見られるテレビ。PCから離れ、ソファーに座ってワインを飲みながら見られるような、ゆるいサービスにしたかった。

 先端的で、時にマニアックだったこれまでの「はてならしさ」は切り捨て、サービス名からも「はてな」を取った。サービスイン時から英語版も用意。国際化対応した正式サービスは、同社としては初めてだ。

 開発したのは、2ch発のOS「Mona OS」で有名な同社の蓑輪太郎さんと、昨年新卒で入社したばかりのUI専門家・神原啓介さんだ。

インタフェースは「ほとんどない」

 Rimoにアクセスするといきなり、動画のタイトルと「このあとすぐ」という文字が表示され、少し待てば、ウィンドウいっぱいに動画が再生される。終わると次の動画のサムネイルが映り、「このあとすぐ」の画面が再び。そしてまた、別の動画が再生される。ただ映像を流すだけなら操作は一切不要。テレビのように受け身でいられる。

photophotophoto まずタイトルが表示され、少し待つと全画面で動画を表示。マウスオーバーすればリモコンやスキップボタンが表示される。画面を右クリックすればYouTubeにアクセスできる

 インタフェースを極力シンプルにし、PCが苦手な人でも迷わず操作できるよう工夫した。再生中、ウィンドウに表示されるのは映像だけ。YouTubeや、Windows Media Playerのような映像再生ソフトと違い、再生時間を示すゲージや早送り・巻き戻しボタン、一時停止ボタンなどはない。

photo UIはたったこれだけ。ヘルプも「取り扱い説明書」という名前にして初心者にも分かりやすくした

 チャンネル変更・音量調整用のリモコンや、映像スキップ用の「→」ボタンは、映像の上にマウスを当てて初めて表示される仕組みだ。動画をスキップするボタンにも「次へ」や「NEXT」といった文字もつけず、ただ「→」だけにし、子どもや外国人でも分かるようにした。

 「“Web2.0的”なサービスのユーザーインタフェース(UI)は、サムネイルを使ったりエフェクトをかけたりと難しくなりがちで、一部の人にしか受け入れられない。RimoのUIは、大多数の人が受け入れてくれるものにしたかった」(蓑輪さん)。画面からボタンをなくすことで、操作への抵抗感を減らすとともに、テレビと同じように映像に集中してもらえるよう配慮した。

 再生回数の多い人気の動画を独自のアルゴリズムで選んで表示するため、だらだら再生していても「ハズレ」が少ない。番組プログラムは約1日おきで更新。「昨日のRimo見た?」が職場や学校での会話のきっかけになれば嬉しいという。

 オープン当初、チャンネルは4つだけだが、順次増やしていく予定だ。チャンネルには「はてなブックマーク」(はてブ)の「注目の動画」も加えるか迷ったが「はてブの動画はいい意味で偏っているから、日本全国のお茶の間には響かないだろう」(蓑輪さん)と判断して外した。

「はてな的でない」サービス

 アイデアを思いついたのは昨年11月の終わりごろ。12月3日に行った、家族ぐるみの社員旅行でプロトタイプを披露したところ、スタッフの奥さんや子どもにも受けた。「これまでとは方向性は違うけど『ぜひ作ろう』ということになった」(蓑輪さん)。それから一気に開発し、2カ月で完成させた。

 これまでのはてなのサービスといえば、多機能でユニークな反面、UIが複雑で、ネット上級者にしか使いこなせないものが多かった。だがRimoのUIは最低限。機能は少ないが、誰にでも使えるサービスだ。

 実はもともとは「はてなテレビ」という名前にするつもりだった。だがリリース直前になって、リモコンをもじった「Rimo」に改名。ドメインもあえてはてなの外に取って「http://rimo.tv/」とし、「これまでのはてなとは違う」というスタンスを明確にした。

 「はてなのコンセプトは『テキスト中心のネットコミュニケーションで生活を豊かにする』というものだが、動画中心でコミュニケーションもないRimoとは正反対。Rimoを下手にはてな色に染め、『ID連携』『タグ』『ユーザー投稿』といったはてな的な機能を付けると、魅力が失われるかもしれない」――“はてな色”を取り去った理由を、同社の輿水宏哲さんはこう説明する。「これがうまくいけば、はてなと別会社で運営してもいい、ぐらいに思っている」(輿水さん)

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