全日本空輸(ANA)は、2007年中に国内線において従来の航空券を廃止し、非接触IC「FeliCa」もしくは「QRコード」を用いた搭乗サービス「スキップ(SKIP)サービス」に全面移行すると明かした。9月4日から愛媛県松山空港にて移行トライアルが始まり、10月以降、国内線全空港に順次拡大する模様だ。
SKIPサービスは、2006年9月からANAが導入したチェックイン不要の搭乗サービス。従来からある紙の航空券の代わりに、FeliCaを搭載したANAのマイレージ会員証「ANAマイレージカード」や「ANAカード」、ANAマイレージクラブのICアプリを導入した「おサイフケータイ」、携帯電話画面への表示や紙にプリントした「QRコード」などを使う。このサービスを利用すれば、座席の予約から保安検査場の通過、搭乗まですべて“チケットレス”になる。
ANAではSKIPサービスの利用促進に力を入れており、羽田空港など主要空港ではSKIP利用者専用の保安検査ブースが用意されている。また、今年に入ってからは、新型キオスク端末「ANA SKY KIOSK」でビジネスユーザーからの要望が多かった領収書発行機能が用意された。
しかしその一方で、SKIPサービスの認知度不足や従来型航空券の利用が根付いていることがハードルになり、その利用者は「月間利用率で搭乗客全体の10〜20%程度」(全日本空輸広報室)なのが現状だ。ANAは従来型の航空券を廃止し、国内線の搭乗方法をSKIPサービスに全面移行することで、同サービスの利用促進と導入効果の拡大を図りたい考えだ。
「SKIPサービスではチケットの予約購入から搭乗までの手続きが簡略化され、スムーズにご搭乗いただけます。また、チェックインが不要で、予約変更手続きなどが簡単かつ迅速にできるなどのメリットがあります。SKIPサービスに全面移行すれば、空港での様々な手続きや搭乗までにかかる時間が短縮され、定時運行にも貢献します。これらは結果的に、お客様の利便性向上に繋がると考えています」(広報室)
確かに搭乗方法がすべてSKIPサービスに統一されれば、FeliCaやQRコードのシステムを使う“スピード向上”のメリットを最大限に引き出すことができる。また、松山空港から新たに導入される搭乗改札機は、FeliCaとQRコードの読み取り部しかないため、中にチケットを通すための駆動部が必要ない。改札機で最も故障が発生しやすいのは、チケットを通すための駆動部分だ。“非接触”への完全移行は、鉄道の改札機と同様に、機器メンテナンスコスト削減のメリットが見込めるだろう。
なお、今回の全面移行のトライアルで松山空港を選んだ理由としてANAでは、「東名阪の主要空港からの就航がまんべんなくあり、ビジネス客と観光客の両方にお使いいただいている空港なので(トライアルとして)最適だった」からだとしている。
SKIPサービスはFeliCaとQRコードという携帯電話でも馴染み深い技術を使っており、携帯やPC向けネットサービスとの連携も綿密に図られている。最新のテクノロジーを迅速に普及させ、利用者の利便性向上にどう結びつけるか。ANAの「SKIPサービス全面移行」は、公共交通におけるサービスの高度化と、携帯電話・ネット連携の取り組みの先行事例として、注目のトピックスになりそうだ。
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