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マグネシウムで透明導電膜 ITO代替候補の新材料、東海大が開発

» 2007年10月30日 21時18分 公開
[ITmedia]
photo 新材料を発表する久慈教授(右)と千葉准教授

 液晶パネルの透明電極などの材料「インジウムすず酸化物」(ITO)の代替物になりうる新規材料を、安価なマグネシウムを使って開発したと、東海大学などの研究グループが発表した。

 ITOに含まれるレアメタルのインジウムは、液晶パネルの生産拡大で資源枯渇のおそれがあり、価格も高騰している。豊富なマグネシウムを使った新材料なら低コスト化と安定供給が可能になるとして、企業と協力して実用化を目指す。

 開発したのは同大開発工学部の久慈俊郎教授と千葉雅史准教授、アイセック・ナノ中部(静岡市)のグループ。

 研究グループは水酸化マグネシウムに着目し、層構造中に炭素を導入。この材料を使っい、ITOと同様に「スパッタリング法」でガラス上に膜を形成。水蒸気中にさらすと透明化し、電気特性評価を行うと、電流が流れ、抵抗値を確認できたという。

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 光の透過率は可視光領域で約90%とITOに匹敵。電気特性を示す「比抵抗」(Ωcm)はITOに劣るが、ITOの開発当初とほぼ同等で、今後の研究で向上が期待できるという。

 水酸化物のため、330度ほどに過熱すると水が抜けるが、100度程度までは安定的という。またガラス基板との密着性なども課題だとしている。

 成果は11月1〜3日の「表面科学講演大会」で発表する。

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2011年にインジウムが枯渇という指摘も

 ITO(Indium Tin Oxide)は液晶パネルのほか、有機EL、青色LED、太陽電池などに広く使われている。液晶パネルの生産拡大につれて、主成分のインジウムも需給がひっ迫しており、2011年には資源が枯渇するという指摘もある(現在の主産国は中国)。市場価格は3年で5倍になるなど、一時高騰した。

 需要が世界的に急成長している液晶メーカーにとっては、インジウムは生命線。シャープがパネルからのリサイクルに取り組むなど、あの手この手で回収率の向上を図っているほか、メーカーや研究機関は代替材料の研究に活発に取り組んでいる。現在は酸化亜鉛を使った代替材料が有望視されている。

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