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Google「OpenSocial」で「もっと、もっと、もっと」

» 2007年12月03日 20時24分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 クリス・シャルク氏

 「OpenSocialは“もっと、もっと、もっと”を実現する」――来日したGoogleのクリス・シャルク氏は、OpenSocialでWebの世界に革新をもたらしたい、と語った。

 OpenSocialはGoogleが提唱するSNS共通API。これが広まれば「開発者はもっと多くのアプリケーションを開発でき、Webサイトはもっと多くのアプリを活用でき、もっと多くのユーザーがそれらのアプリを利用できる」という。

 Googleがオープン規格を提唱するのはなぜなのか――「テクノロジーをいかしてWebに貢献するのがGoogleの役割」とシャルク氏は説明。「明確な収益プランはまだない」としつつも、広告モデルを視野に入れていると明かした。

APIは標準化されていた方がいい

 OpenSocialは、SNSなどコミュニティーサイトのAPI規格を共通化し、外部開発者がSNS向けアプリケーションを開発しやすくする狙い。すでに日本で「mixi」を運営するミクシィを含む世界200社以上がパートナー企業として参加している。

 「外部の開発者がアプリケーションを作る場合、サービスのAPI規格がバラバラだと、サービスごとにアプリを作り替えなくてはならず不便。今後ソーシャル機能を備えたWebサイトが増えるだろうことも考えると、APIが標準化されていた方がいい」

 APIの共通化で各SNSの個性が失われるのでは――という心配も一部にあるが、シャルク氏は「OpenSocialはインフラで、SNS間の障壁を取り除くだけ」とし、活発な外部アプリ開発で、SNSはむしろ多様化し、革新が進んでいくと話した。

 シャルク氏は、OpenSocialがGoogle単独の事業ではなく、他社と協同したオープンな規格だと強調。「コミュニティーと協力して作っている。米国本社ではパートナーからのヒアリングを2週間に1回程度行っている」

 日本のパートナーも、テレビ会議などを通じてヒアリングに参加できる仕組みを作っていきたいという。関連文書の日本語化なども進めていく方針だ。

モバイルやビジネスアプリにも

 OpenSocialはHTMLやJavaScript、Flashといった標準的な技術を利用しており、「モバイルとの相性もいい」という。REST APIにも対応予定で「サーバ間コミュニケーションにも対応でき、情報をセキュアにやりとりできる」。

 エンタープライズ分野への活用も、来年から本格化させる計画だ。例えば、顧客情報を扱うアプリケーションのAPIを共通化し、外部アプリから必要な情報だけを抽出できるようにする――など。「現在は、Oracleやsalesforce.comなど参加企業からフィードバックをもらっている段階」

収益は広告から?

 GoogleがOpenSocialを手がける第1の理由は「テクノロジーの進化を手伝い、Webの世界に革新をもたらすため」といい、当面の収益化は計画していないという。「明確な収益プランはないが、検索サービスがそうだったように、収益は後から付いてくるだろう」

 収益化の手段としては、APIを使ったアプリに広告を入れる――といったものが考えられる。ただ、FacebookがAPI公開直後に新たな広告ネットワークを導入してユーザーからの反発を浴び、機能を修正した、という例もある。

 「広告は『絶対にやらない』とは言えないが、Facebookへの批判もあるから慎重にやる必要がある。まずは技術中心に発展させていき、その後、広告収入を見込むこともあるかもしれない」。

 独自でAPIを公開したFacebookに対しては「OpenSocialとFacebookは対決するものではない。オープンなやり方で、お互い協力できるのでは」とした。

元MSの古川享・慶応義塾大学教授も取材

画像 古川享教授

 会見には、元Microsoft副社長の古川享・慶応義塾大学教授がブロガーとして取材に訪れた。Q&Aセッションでは最初に手を挙げ、「匿名のユーザーによるアタックがあった場合の対処策は」「OpenSocialによってネットワークのトラフィックが増えると考えられるが、その対応は」と質問した。

 シャルク氏は「セキュリティと認証については、最優先課題として注力している。認証プロトコルOAuthを利用し、オープンでセキュアな環境を築く」「APIではトラフィックを直接扱っておらず、特別なカバーは考えていない」と答えた。

 古川教授は会見後「Googleがマッシュアップや創造のための行っている努力は否定しないが、YouTubeもそうだったように、ネット上のトラフィックが増えることに無関心で、利便性だけを追求しているように見え、サービスの社会性を考えているのか疑問。オープン化によってレガシーなサイトのブランド力が落ちると思うが、それに対するプロテクションについても明確な答えはなかった。著作権問題にどう取り組むかも疑問だ」などと感想を述べた。

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