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Facebook Beaconのプライバシー騒動で逃げ出す広告パートナーも

» 2007年12月04日 17時13分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の米Facebookが先ごろ発表した新たな広告システム「Beacon」は、何千人ものユーザーの怒りを買った。Beaconシステムでは、友人に知られたくない情報まで公開されてしまうケースがあったからだ。

 では、Beacon機能でFacebookと提携したパートナー各社はこの広報面での悪夢にどのように対処しているのだろうか? Beaconは「オンラインでの自身の活動に関する情報を友人と共有するためのプログラム」として11月6日に発表されたもので、その際、数社のパートナーがこの広告プログラムへの参加を表明していた。

 だがこの発表を受けて、自分たちのWebでの行動が公開されることに抗議する嘆願書に5万人以上のFacebookユーザーから署名が寄せられたため、Facebookは11月29日、Beacon機能をオプトアウト方式からオプトイン方式に切り替えた。その後の周囲の反応はさまざまだ。

 Beaconのあるパートナー企業の広報担当者は匿名を条件に、「当社にとってこの状況は特に大きな問題ではない」と語っている。この会社はFacebookのBeaconシステムに対応するアプリケーションを開発済みだ。

 「当社が開発したのは公的なサービスだ。当社には、今回の混乱を理由にBeaconプログラムから脱退したり、Facebookとの関係を変更したりといった計画はない」とこの広報担当者は語っている。

 ただしこの広報担当者も、そのほかのBeaconパートナー企業のなかには、今回の騒動を懸念する向きもあるであろうことは理解できるという。なぜなら、オンラインでのユーザーの活動に関する情報には、例えば「Beaconパートナー企業であるOverstock.comからVictoria's Secretの下着を購入する」といった場合のように、プライバシーがより重要となるものもあるからだ。

 プライバシーをめぐる問題を理由にBeaconプログラムへの参加方針を変更するつもりがあるかどうかについて、小売りサイトのOverstock.com、DVDビデオレンタル大手のBlockbuster.com、旅行サイトのTravelocityに問い合わせたが、いずれからも返答は得られなかった。

 オークションサイトのeBayは自社のサイトにBeacon機能を統合し、出品者が自分の出品リストをFacebookのNews Feedsに配信できるようにする計画だ。eBayの広報担当者アッシャー・リーバーマン氏がeWEEKに語ったところによると、この統合の狙いは、入札者に自分の出品リストを見つけてもらいやすくするための新たな方法をeBay.comへの出品者に提供することだが、この統合が実現するのは2008年に入ってからの予定という。

 「第1四半期にサービスを始動させる時点では、プライバシーの問題も解消されていて然るべきだ。プライバシーはわれわれにとっても非常に重要な問題だからだ」とリーバーマン氏は語り、ユーザーのプライバシーを守るため、eBayはFacebookのニュースフィードでは購入情報は公開しない方針だと説明している。

 さらに同氏によると、eBayにBeacon機能を統合する際には、明示的なオプトイン方式を採用し、自分の出品履歴をFacebook上のほかの友人と共有したいかどうかを出品者がはっきり選択できるようにする方針という。

 まだBeacon機能の統合を済ませていない一部のBeaconパートナー企業のなかには、また別の方針を取っているところもある。

 例えば、Coca-ColaはNew York Times紙の取材に応じ、「現在Beaconの実装計画は棚上げになっている」と語っている。Facebookは新しい広告プログラムのFacebook AdsとBeaconを発表する際、大手の広告パートナーとしてCoca-Colaの参加をアピールしていた。Coca-Colaの広報担当者によると、同社はBeaconが最初からオプトイン方式を採用するものと思っていたという。

 またニューヨークに拠点を置くファッションサイトのBluefly.comは、Beacon機能の統合に関連して社内で問題が発生し、まだ同プログラムに参加せずにいるが、同社の広報担当者はeWEEKの取材に応じ、「プライバシーをめぐる混乱があるため、参加については現在検討中だ」と語っている。

 こうしたパートナー各社のさまざまな反応は、FacebookやMySpaceといったSNSサイトが自社のサービスで広告収入を得ようとする場合の先行き不透明感を反映していると言えるだろう。

 そうした広告プログラムを成功させるためには、SNSサイトはまず広告パートナーを仲間に引き入れる必要があり、さらには、プライバシーを保護しながらなおかつユーザーの注目も集められるような技術や手法を導入する必要がある。

 通常、ユーザーのターゲットを絞った広告プラットフォームには人口統計データやときにはコンテキストが利用されるが、Facebook Adsの場合は広告ターゲティングにSNSサイトの詳細なデータが活用される。これは業界初の試みだ。

 Facebookが当初Beaconを実装したやり方は、SNSサイトが行ってはいけない広告手法の見本と言えるだろう。ユーザーの間からは、オプトアウトのボタンが見つからないという苦情が相次いだ。オプトアウトのためのボタンは数秒間表示されるだけで消えてしまっていたからだ。現在は、自分のオンラインでの活動に関する情報を企業に公開するかどうかをユーザーが選択できるようになっている。

 米調査会社IDCのアナリスト、カーステン・ワイデ氏によると、Beaconは広告効果を改善するための優れた方法であり、新種のメディアパブリッシャーにとってはひな型にもなるが、ユーザーの行動パターンに基づく広告ターゲティングをWebサイトに導入する際の失敗例として格好のケーススタディにもなるという。「Facebookはフィードバックのために実社会のユーザーでBeaconをテストすべきだった」と同氏は指摘している。

 またワイデ氏は、行動パターンに基づく広告ターゲティングを方法を誤らずに正しく実装できれば、消費者は不要な広告の大半を受け取らずに済むことになるだろうと指摘している。「Facebookがしくじったのは、ユーザーのデータの使用について明示的に説明しなかったことだ」と同氏は調査報告書に記している。

 さらにワイデ氏はオプトアウト方式について、「一瞬で消えてしまうような紛らわしいやり方ではなく、明確な形で説明する限り、オプトアウトを採用すること自体に問題はない」と指摘している。

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