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宇宙、それはLANの最後のフロンティア

» 2008年02月15日 08時56分 公開
[Paula Musich,eWEEK]
eWEEK

 イーサネットLANはデーターセンターから家庭、近所のStarbucksまであらゆる場所で使われている。だが、宇宙こそがその最後のフロンティアとなるかもしれない。

 2月16日に国際宇宙ステーション(ISS)に到着するスペースシャトルAtlantisに載せられた実験棟「Columbus」に、European Aeronautic Defense and Space Company(EADS)はカスタマイズ版の100Mbps LANスイッチ「ProCurve」を搭載している。ISSのコンピュータだけでなく、科学実験機器も接続するために作られたものだ。

 ColumbusはISSにドッキングされ、ISSの新たなコンポーネントとなる。欧州初の長期宇宙研究施設であり、ISS増築への欧州最大の貢献でもある。

 Columbusには、それぞれ固有の機能を持った5つのラック(ペイロード)が積まれている。例えばBiolabは、微生物、細胞や組織の培養、小さな植物や動物の実験ができる。Fluid Science Labは流体の複雑な動きを観察し、European Physiology Modulesは、骨量の減少、血行、呼吸、免疫系などの身体機能に無重力が及ぼす影響を長期的に調べるためのものだ。

 これらのペイロードをネットワーク化すると決定したため、EADSはネットワークを10Mbpsの古いCabletronのハブを使ったLANから、100MbpsのLANにアップグレードしなければならなかったと、独EADS Space TransportationのColumbusデータ管理システム技術責任者ロルフ・シュミットューバー氏は語った。

 「当初は10MbpsのLANでコンピュータを接続していただけだったが、速度が足りないと感じていた。これらのペイロードをもっと高速でつなぎたかった。そこで、19インチのラックに収容した科学実験用ペイロードを支えるシステムを構築し、ペイロードをLANにつないだ」(同氏)

 EADS Space TransportationはAvaya、Cisco、D-Link、NETGEAR、3Comのスイッチを評価し、(Hewlett-Packard(HP)の)ProCurve 2524 LANスイッチを選んだ。決め手は性能、信頼性、堅固さ、放射線や機械的な故障への耐性、管理機能だった。

 「放射能の問題を最小限に抑えるために、電子部品の少ない、小型の機器を提供できるベンダーに絞った」とシュミットューバー氏は言う。「スイスで実施した放射線テストで、HPが一番いいことが分かった。ほかのスイッチには、HPのようにプログラムしたり調整できないものもあった」

 EADS Space Transportationは、金属板の筐体を取り除くなど、ProCurve 2524に変更を加えなければならなかったが、これは宇宙で最初の商用スイッチだと同氏は言う。

 「ProCurveを電気系統の改造なしでそのまま持ってきた。手を加えたのは冷却方法だけだ。スイッチングファブリックのヒートシンクを取り除いて、代わりに銅ストリップで熱を筐体の接地板に逃がしている」(同氏)

 EADS Space Transportationの技術者は、強い振動に耐えられるアルミニウムの筐体も設計した。「振動が機器を壊さないような構造を作った」と同氏は言う。

 このLANでは信頼性がカギになる。障害が起きたら、実験機器が機能しなくなるからだ。だがEADSは広範なテストの結果、ProCurveに「万全の自信」を持っていると同氏は語る。

 Columbus研究棟内のペイロードを接続するだけでなく、このLANはISSのLANに取り付けられたVLAN(仮想LAN)を介してISSのコンピュータにつながる。

 Columbusのペイロードのデータは、このシステム上のすべてのコンピュータに配信され、すべてのコンピュータが同じ情報を持つという。「すべてのシステムデータを集めるメインコンピュータがあり、この情報がほかのコンピュータに配信される」

 ペイロードのデータはISSのLANにも転送され、衛星回線で地上の実験者に送られる。データは独オーバープファッフェンホーフェンのColumbusコントロールセンターに送信される。

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