秒速10センチで歩く、2足歩行ロボ。ゆっくりと景品に近づいて抱え上げ、穴に運んで落とす――「ロボキャッチャー」は、身長約30センチのロボットを、ボタン操作で動かして景品を取るというクレーンゲームだ。
福岡市のロボットベンチャー・メカトラックスが開発した。創業者の1人で、2足歩行ロボットの競技大会「ROBO-ONE」で2連覇した経験を持つ古賀俊亘さんが技術開発リーダーを務める。
起業は2005年12月。古賀さんがROBO-ONEで使った2足歩行ロボットを改良した「KRB-1」を販売してきたが、価格は65万円と高価で、これまでに売れたのは5台ほどだ。
KRB-1は、ロボット用のOSやマイコン基板などを搭載して検証するプラットフォームとして、大学の研究機関などで使われている。「趣味で欲しいという人もたまにいたが、一般向けには売れなかった」と、もう1人の創業者・永里壮一社長は話す。
どうすれば売れるのか。同社が思いついたのは、アミューズメント施設向けの製品に応用するというアイデアだった。
コントローラーでロボットを操り、ステージ上で戦う――最初に企画したのはそんなゲーム機だったが、試算すると売価は1500万円にもなった。ゲームセンターに話してみたが、「セガやナムコが作った機械ならともかく、ベンチャーが作った1500万円のゲーム機なんて買わない」と言われた。
次に目を付けたのが、クレーンゲームへの応用だ。「全く新しいものを作るより安く開発できる」と思ったからだ。
永里社長によると、全国のクレーンゲーム機による売り上げは年間約2000億円。ゲームセンターの売り上げの3割ほどを占めているという。
「クレーンゲームはゲームセンターの主力商品だが、差別化が難しい。景品で差別化するのではなく、ロボットを使った新しいゲーム機を作れば、ゲームセンターが受け入れてくれるんじゃないか」
試作機は2006年秋ごろから作り始めた。中古のクレーンゲームを購入し、ホームセンターで買ってきた蛍光灯やベニヤ板、布で装飾した。
ロボットはKRB-1を改造したブラックボディ機。長時間稼動に耐えられるよう、関節のモーターをより耐久性の高いものに変更した。自由度は19と、KRB-1の21より減らしてコストダウン。身長はKRB-1より7センチ小さい約30センチで、毎秒10センチで歩く。
アームの長さは約20センチ。景品をつかむ際のアームの開き具合は、ゲームセンター側に128段階から調節できるようにしてもらった。持ち運べるのは最大200グラムまでの景品。背面でケーブルとつながっており、ゲーム機の外からボタンで操作できる。
試作機には不具合もあった。景品を持ったまま歩くとロボットがバランスを崩す、床にすべって転倒する、アームにケーブルがからまる――などで、何とか修正して「AOU2007アミューズメント・エキスポ」(昨年2月)に間に合わせた。
「半信半疑で出展したけどかなり評判が良かった。20〜30代のゲーム好きの男性にうけるかと思っていたら、女性からも『かわいい』と想定外の人気だった」。ロボキャッチャーに1時間待ちの行列もできたという。
「これは良いアイデア」「キャタピラで動くロボットかと思ったら、2足歩行とは」――ゲームセンター側からの評価も高く、手ごたえをつかんだ。
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