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夜でも太陽エネルギーで発電、MITが新手法発見

» 2008年08月01日 17時46分 公開
[ITmedia]

 太陽光エネルギーを保存しておいて、日が照っていないときに使えるようにする方法を、米マサチューセッツ工科大学(MIT)が発表した。

 現時点では、太陽エネルギーを保存しておいて後で使うには多額の費用がかかり、効率も悪い。だが、MITは植物の光合成をヒントに、安価で効率的な保存方法を発見したとしている。

 その方法とは、太陽光エネルギーを使って水を水素と酸素に分解し、後でこの水素と酸素を燃料電池内で化合させて電気を作るというもの。カギとなるのは水から酸素ガスを発生させる新しい触媒で、コバルト金属、リン酸塩、電極で構成される。これを水に入れて電極に電流を流すと、コバルトとリン酸塩が電極上に薄い膜を作り、酸素ガスが発生する。この触媒は室温で、中性の水の中で作動し、使うのも簡単だという。これをプラチナなど、水から水素ガスを発生させる触媒と組み合わせると、光合成の際に起きる水の分解反応を再現できると研究者は説明している。

ダニエル・ノセラ氏

 MITの研究者ダニエル・ノセラ氏は、今回の発見は「われわれが何年も前から語ってきたパラダイスだ」としながらも、「これは始まりにすぎない」としている。現在の電気分解装置は高額で高塩基性環境が必要になるため、人工光合成には適していない。今回の発見を既存の光電池システムに統合するためには、工学面でさらなる取り組みが必要になるという。

 ノセラ氏は、10年以内に、家庭で光電池を使って太陽光で電気を作り、余ったソーラーパワーで水素と酸素を作り出して家庭用燃料電池に使えるようになると期待している。同氏らの研究成果は7月31日号の「Science」誌に掲載される。

日中は光電池で家庭に電力を供給し、余ったエネルギーで水を酸素と水素に分解して保存する(左)。光電池が使えない夜間は保存しておいた水素と酸素を燃料電池内で化合する(右)

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