「過激に狂ってないと、革命は起こせないですから」――ゲームベンチャー・芸者東京エンターテインメントの田中泰生社長(32)は「極端に振り切ったインパクトがあるものが好き」だ。
「ハイテクで新しい遊びを作り、世の中を驚かせたい」と2006年に起業し、今年「世界初の一般向け拡張現実エンタメソフトウェア」というふれ込みで「電脳フィギュア ARis」を発売した。
PC画面の中のメイドさんを、手に持ったスティックでつんつんしたり、服を脱がせたり、さまざまな角度から眺めたり――遊び方は単純で、ちょっと過激な「お色気路線」だ。
「よく『変態』とか『やり過ぎ』とか言われるが、賛否両論でも構わない。サザンオールスターズは国民的バンドだが、昔は過激な存在だったでしょう?」
電脳フィギュアARisは、1.5センチ角のプラスチック製「電脳キューブ」と、キューブを先端に付けた長さ10センチの「電脳スティック」、カードなどをセットにした商品。PCに専用ソフトをインストールし、Webカメラの前にキューブを置くと、PCに表示したWebカメラ画像の上に、3Dのメイドさん「ARis」が、キューブの上に立った状態で現れる。
スティックをキューブの上で動かせばARisをつついたり、なでたりできる。チアガールや制服に着替えさせたり、服を脱がせて下着姿にすることもできる。キューブをカメラに近づければARisが大きく表示され、下から見ればスカードの中をのぞくことも可能だ。
「楽しみ方は、触る、脱がす、のぞくの3つ。オヤジ的発想です」
「Amazon.co.jp」で10月19日の発売4日前に予約受け付けを始めたところ注文が殺到。それから3日間ほど、Amazon.co.jpの「エレクトロニクス」分野で、販売ランキング1位をキープしていた。
初回出荷分3000個は3日ほどで完売。予想以上の人気で、専用ソフトのダウンロードにアクセスが集中し、ダウンロードに時間がかかったり、失敗するといった問題も発生した。「ユーザーに迷惑をかけて、本当に申し訳なかった」
なぜそんなに注目を集めたのだろうか。「遊び方が分かりやすかったからだろう。分かりやすいから、やってみたいと思ってもらえた」と田中社長は分析する。
ARisはいわゆる“萌えキャラ”だが、田中社長は、アニメや萌えの世界に詳しいわけではない。「特別に何か好きなものがあるわけでもなく、要領良く生きてきた」。田中社長はこれまでの人生をこんなふうに振り返る。
1浪して東京大学法学部に入学し、6年かかって卒業した。官僚か弁護士を目指していたこともある。ネットやPCとは無縁の生活で、自分用PCを初めて購入したのは24歳の頃だ。
大学在学中からビジネスに関わっていた。建築士が製図する際に使う「ドラフター」を引き取り、リサイクルして建築学科の学生に売ったり、女の子のいる家庭に東大の女子学生を家庭教師として派遣するサービスも手がけた。
卒業間際には、家庭教師の派遣を通じて知り合った東大の理系の学生と一緒に「リヴィールラボラトリ」という会社を設立し、社長に就任した。大手企業からの依頼を受け、鼻歌を歌うと曲名を教えてくれるシステムなどを作った。
だが当時はビジネスの基本も知らなかったと話す。顧客に見積書を提出するよう言われた際、費目に「夜食代」まで含めてしまい、あきれられたこともあった。
卒業後、ビジネスを学ぼうとリヴィールラボラトリを離れ、コンサルティング会社へ。アパレル、大手商社、損害保険など、さまざまな企業の事業戦略を練った。
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