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「過激でないと革命は起こせない」――そして「電脳フィギュア ARis」は生まれた(2/2 ページ)

» 2008年11月07日 07時00分 公開
[宮本真希,ITmedia]
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ロボット、バイオ、宇宙――「いろいろ勉強しました」

画像 田中社長

 コンサルティング会社は1年半で退職。仕事を通じて知り合った、テクモの当時の社長に転職を誘われたからだ。「ファミコン世代で、テクモのゲームもいくつか持っていた。ゲーム業界も悪くないな」と、転職を決めた。

 携帯ゲームやオンラインゲームなどを扱うテクモ子会社のテクノロジーアンドモバイルラボラトリーのCOOに就任。初めて「コンピューターにまじめに取り組んだ」という。

 そのうち「コンピューターを使った遊びは無限だ。ハイテクとおもちゃを組み合わせて、次のデジタルな遊びを作りたい」と思うように。新しいものを自由に開発できる環境を求め、04年にテクモを離れた。

 その後2年間は、リヴィールラボラトリに戻り、「次のテクノロジー」を勉強する日々。ロボット用ソフトやバイオテクノロジー、CGなどさまざまなことを研究した。RSSリーダーを手がける会社を手伝ったり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「宇宙オープンラボ」に参加し、高性能計算機システムの開発にも携わった。

ハイテクといえば秋葉原、秋葉原といえばメイドだろう

 「時流に乗っていて、ハイテクで、インパクトのあるものを作りたい」――06年に芸者東京エンターテインメントを設立した。ARisは、同社の第2弾サービスだ。

画像 こんなにきわどい衣装も

 開発のきっかけはアニメ「電脳コイル」。電脳メガネをかけると実際の町並みにバーチャルなデータが重なって映し出され、電脳ペットを飼えるという設定にひかれ、拡張現実に興味がわいた。

 だが、電脳ペットを飼って楽しむ“癒し”の製品では物足りないと感じた。「極端に振り切ったものが好き。もっとインパクトのあるものを」と、製品案を練った。

 メイドを登場させたのは「ハイテクといえば秋葉原」「秋葉原といえばメイドだろう」という発想から。さらに「エンターテインメントなものを作るときには、バイオレンス、セクシー、クール、キュートな要素が必要」という独自の信念のもと、「健全なお色気」の商品・ARisが仕上がった。

 ARisにバイオレンスな要素はないが、「例えば『北斗の拳』のように、手に持ったスティックで画面の中のキャラを攻撃するような設定の製品でも面白いかもしれない」と思っている。

 “過激に振り切った”作品でまずは世間の注目を集め、今後は世界に挑戦したいと考えている。「過激なものは後からいろいろな人の好みに合わせて味を薄くすることができる。ARisでグローバルに戦いたい。グローバルに『あいつらおかしい』と思われていたい」

ARisの新しさとは

 ARisの仕組みのカギは、電脳キューブの各面にプリントした記号のような模様。Webカメラでキューブの位置を認識させるためのマーカーとして働く。

 通常、マーカーを大きくすればするほど認識率は向上するが、ARisの場合はキューブが1.5センチ角と小さくても認識できる。各面のマーカーを少なくとも1つ以上認識すれば、位置を特定できるという特徴もあり、この技術は特許出願中だ。ソフトは、自社開発した拡張現実ソフトウェアフレームワーク「GTE_AR_Framework」で構築した。

画像 芸者東京エンターテインメントのオフィス。バランスボールはいす代わりという。ARisは、別の場所に借りた倉庫に保管している

 ARisのような拡張現実の発想は、そう新しいものではない。有名どころでは、拡張現実アプリ構築をサポートするC言語用のライブラリ「ARToolKit」がオープンソースで公開されている。ARToolKitを使い、初音ミクの3DCGを踊らせる拡張現実アプリを作り、その様子をYouTubeで公開している人などもいる。

 では、ARisの新しさとは何なのだろうか。「お金を出せば、ARTool Kitの知識などがなくても、誰でも拡張現実を気軽に体験できるようにしたこと」だという。「世界初の一般向け拡張現実エンタメソフトウェア」――ARisのキャッチコピーには、そんな思いがにじむ。

 ARisの“新しさ”を保っていくために、継続的なバージョンアップが必要だと考えている。「情熱を失わずに開発を続けていけば、同じようなほかの製品が出ても負けない」

 だがARisは「まだ粗削り」と感じている。ARisを使ったユーザーから「“俺の嫁”にしては完成度が低すぎる」と言われたこともあるし、「もっとこうした方がいい」というアイデアを毎日のようにメールで送ってくれるユーザーもいる。

 「例えば『ウイニングイレブン』が5作目くらいから面白くなってきたように、ARisも、開発を継続して、いいものにしていく。“俺の嫁”レベルに高めていきたい」

 電脳フィギュアの第2弾も計画している。内容は秘密だが「毎回“something new”を目指す」といい、複数のキャラを使って楽しめるようにするといったことを考えている。

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