ドワンゴは11月14日、「ニコニコ動画」を2009年6月以降に単月黒字化させる見通しを明らかにした。トラフィック増に伴い回線費用などがかさんで赤字が続くが、広告収入や有料会員の拡大を加速させ、09年4〜9月期には営業黒字への転換を見込む(夏野氏、ドワンゴ「取締役エバンジェリスト」に ニコ動「黒字化担当」)。
2008年9月期の同社ポータル事業(ほぼニコニコ動画)は、売上高が前期から9.2倍の18億1000万円だった。月額500円の有料制「プレミアム会員」の増加が想定に届かず、計画を14億2900万円下回った。一方、回線費用やサーバ増設などで費用がかさみ、売上原価は4.2倍の28億3500万円に。売上総利益(粗利)段階で10億2500万円の赤字となり、営業赤字は15億1500万円だった。
今期(2009年9月期)の同事業は、売上高は前期比約2.6倍の48億円を見込む。だが営業損益は8億円の赤字にとどまる見通しだ。
ただ、各種施策の効果で広告収入とプレミアム会員収入の拡大を見込んでおり、「6月ころには売り上げと費用をクロスさせたい。月ごとに赤字になったり黒字になったりはあるかもしれないが、8月以降は黒字で行けると思う」(小林宏社長)。通期では売上総利益が3億円の黒字を見込んでおり、営業損益は上期(08年10月〜09年3月)は9億円の赤字だが、下期(09年4〜9月期)には1億円の黒字に転換させる計画だ。
売り上げ | 金額 |
---|---|
有料サービス | 18億4300万円 |
広告 | 15億4200万円 |
ポイント | 11億9100万円 |
アフィリエイト | 1億8800万円 |
その他 | 3600万円 |
合計 | 48億円 |
今期、ニコニコ動画運営で掲げる課題は「収益化と一般化」。収入の柱は、有料サービス、広告、10月にスタートした「ニコニコポイント」だ。
09年9月末の予想会員数は1420万人(11月13日時点で1001万6000人)、有料会員は36万人(同21万5000人)を見込んでいる。有料会員は今年9月まで4カ月横ばいが続いたが、「ニコニコ生放送」への優先参加などの優遇策で増加トレンドに転じたという。今後も優遇策を拡充し、有料会員の増加を図っていく。
広告は7〜9月は満稿状態だったといい、10月から広告枠の変更を実施。結果は好調で、10月は9月実績を上回り、11月に入っても同様の傾向が続いているという。ゲームメーカーや食品系でナショナルクライアントの出稿実績も出てきており、今後はナショナルクライアントを見込める新サービスなども展開していく。「一番伸ばして行けるのは広告。広告枠を増やし、出稿が増え、単価も上がるようにしていきたい」(小林社長)
ニコニコポイントは2週間で1000万円程度の売り上げがあり、「想定通りのスタート」。ただ、ポイントで遊べる「ニコニコメダルゲーム」は公開から間もなく休止。「クオリティ不足だった。ただちに止めて仕切り直し中」(小林社長)といい、再開時期は未定だ。だが12月4日発表予定の「ββ」(ダブルベータ)以降、ポイントを使える有料コミュニティーや有料チャンネル、有料コンテンツなどを増やし、ポイント利用の定着と拡大を図っていく。
「一般化」では、公式チャンネル「ニコニコチャンネル」(仮称)をββで導入。政治家やコンテンツプロバイダの公式チャンネルを拡充するもので、準備中を含め年内には100社が参加する予定という。
ドワンゴ取締役に就任予定の夏野剛氏は「ハイエンドなユーザーはニコニコ動画を既に使いこなしているだろう」として、今後は一般層への浸透にも注力していく方針。ββでは「ヘビーユーザーの使い勝手を失わず、ライトユーザーの使い勝手が良くなる」という。
2008年9月期の同社連結決算は、最終損益が22億9800万円の赤字となり、14億800万円の赤字だった前期から赤字幅が拡大した。
売上高は12.2%増の249億7800万円。ゲーム事業は不振だったが、着うたフルが拡大したモバイル事業やポータル事業の拡大が増収に寄与した。
だがポータル事業で費用がかさむなどし、売上原価は54.0%増の142億3200万円に。そのうち通信費が14億8200万円を占め、前期から2.8倍に増えた。着うたフルの拡大で著作権使用料も増加。営業利益は68.6%減の1億1500万円、経常利益は66.1%減の1億700万円、繰延税金資産の取り崩しなどで最終損益は22億9800万円の赤字だった。
キャッシュフロー(CF)合計は4億200万円のマイナス。営業CFが11億7800万円のプラスだったのに対し、サーバ取得費や企画制作などニコニコ動画関連で固定資産取得費がかかった投資CFが16億5900万円のマイナスだった。現金および現金同等物の期末残高は、期首から約4億円減の116億7400万円だった。
09年9月期の連結業績予想は、最終損益が2億8000万円の黒字に転換する見通し。ポータル事業の増収と赤字幅削減効果などを見込む。売上高は289億円(15.7%増)、営業利益は4億2000万円(3.7倍)、経常利益は4億1000万円(3.8倍)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR