ITmedia NEWS > ベンチャー人 >

夏野氏、ドワンゴ「取締役エバンジェリスト」に ニコ動「黒字化担当」

» 2008年11月14日 19時16分 公開
[ITmedia]
photo 夏野氏

 ドワンゴの顧問を務めてきた夏野剛氏が、12月の同社株式総会を経て「取締役エバンジェリスト」に就任する予定だ。夏野氏は「ニコニコ動画の黒字化が最大の役割」とミッションを掲げ、「日本のインターネットで最大のシンボリックなメディアであるニコ動にかけたい」と意気込んでいる(ニコニコ動画、09年6月以降に単月黒字化へ 「収益化と一般化」課題に)。

 NTTドコモを退社した夏野氏は、7月にドワンゴ常勤顧問に就任。決算期の関係で12月に株主総会が開かれるのに合わせ、取締役に就任する。セガサミーホールディングスの社外取締役など複数の役職を兼任する形になるが、オフィスはドワンゴに構え、「ドワンゴにホームベースを置いてニコニコ動画の黒字化をやる」という。

 11月14日のドワンゴ決算説明会で、夏野氏はニコ動の成長性に賭けていると語った。ブロードバンドとモバイルインターネットが普及している国内だが、EC(電子商取引)やネット広告が各市場の全体に占める割合はまだ少なく、「環境は整っているが、経済効果はこれから」と成長余地が大きいとみる。大手ポータルやSNSなどのページビュー(PV)・ユニークユーザー数が頭打ちになる中、「一番伸びているのは動画、ニコ動だ。大きなパイを取る可能性があるし、取らなければならない」

 顧問就任直後に開かれた「ニコニコ動画(夏)」の発表会では、西村博之(ひろゆき)氏との掛け合いで会場をわかせた夏野氏だが、まず手を付けたのはニコ動の広告枠。10月の結果は枠変更の直後ながら「9月をはるかに上回った」といい、今月も引き続き順調という。

 12月4日発表予定の「ββ」(ダブルベータ)を皮切りに、一般層のユーザーを「ニコ厨にするような」施策を打っていく。ユーザー拡大でPV増を図るとともに、トップページに導線が集まる仕掛けを施すなどし、広告媒体としての価値向上を狙う。

 夏野氏は「ネット広告の最大の問題は、大型広告展開ができるメディアがYahoo!しかないこと」と考えている。「ドコモ2.0」のような大々的PRを展開してきた経験から、「宣伝担当、広告代理店ともまずテレビCMありき。効果は関係ない。でかいのをやりたがる」という広告業界の“ノリ”に対応できる広告商品はYahoo!JAPANにしかないと見る。

 夏野氏が目指すのは、Yahoo!JAPANとは特性が異なりながら、これに匹敵する大々的な広告展開も可能なネットメディアへの成長だ。「日本のネットトラフィックのリーチトップ10にニコ動は入っている。広告収入もトップ10に入りたい。だが単独でできるとは思っていない。IT系、広告代理店などと少し大がかりな仕掛けもやっていきたい」という。

 有料の「プレミアム会員」も「極めて重要。毎月500円を支払ってくれる22万人は大きな資産だ」として、今後は優遇施策を「分かりやすいのから分かりにくいものまで、種々やっていきたい」という。ライブ配信「ニコニコ生放送」もヘビーユーザーからライト層まで「徹底的に訴求」し、今後は小規模ライブ配信で頻度を増やしていく考えだ。ββが一段落した後は「出身母体なので、モバイルをきっちりやりたい」と意欲を見せている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.