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ウイルスを使ったバッテリー、MITが開発

» 2009年04月03日 13時26分 公開
[ITmedia]

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が、遺伝子操作したウイルスを使ったバッテリーを開発した。

 このバッテリーは、ハイブリッドプラグインカーで使われる最新の充電式バッテリーと同程度の容量と性能だとMITの研究チームのアンジェラ・ベルチャー氏は述べている。個人向けの電子機器にも使えるかもしれないという。

 従来のリチウムイオンバッテリーでは陽極(酸化コバルトかリン酸鉄リチウム)と陰極(黒鉛)の間をリチウムイオンが流れる。MITのバッテリーは、ウイルスを遺伝子操作してリン酸鉄でコーティングし、カーボンナノチューブで配線することで、ウイルスを電極として使用するという。使用するウイルスは一般的なバクテリオファージで、バクテリアには感染するが、人間には害はない。

 実験では、プロトタイプは少なくとも100回、容量の低下なく充放電できたという。現行のリチウムイオンバッテリーの充電サイクルよりも少ないが、「もっと長持ちするようにできると思う」とベルチャー氏は言う。

 同氏らは、このバッテリーは、室温かそれ以下の温度で合成でき、有害な有機溶剤は不要なので、環境に影響を与えずに安く製造できるだろうとしている。また非常に軽量で、容器の形に合わせた柔軟なバッテリーが実現可能だとしている。

 今後の取り組みとしては、リン酸マンガンやリン酸ニッケルなど、電圧や容量の高い素材を使って、もっと高性能のバッテリーを目指すという。次世代バッテリーが完成したら、商品化が可能になるかもしれないと同氏は述べている。

 この研究は4月2日にオンライン版Scienceに掲載された。

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