「補償金問題は権利者対メーカーの戦いではない。消費者に関わる問題だ」――インターネットユーザー協会(MIAU)と主婦連合会は10月29日、デジタル専用機への録画補償金課金についての記者説明会を開き、「メーカー、権利者、消費者など関係者を集めた議論の場を早急に設けるべき」と訴えた。
デジタル専用機の録画補償金を支払わなかったとして、私的録画補償金管理協会(SARVH)が東芝を提訴する方針を打ち出している。「訴訟になったら議論はできなくなる」として提訴の前に議論の場を設けるよう、文化庁と消費者庁に訴えかけている。
録音録画補償金は、無劣化のデジタル録音・録画機器普及に伴う権利者の不利益を補償しようと導入されたもの。消費者が負担し、メーカーが協力義務を負う形だ。
補償金問題はメーカーと権利者間の対立として報じられることが多いが、負担しているのは消費者。「消費者が納得できる形で支払えるかどうかの問題」――MIAUの津田大介 代表理事は、消費者の意見が重要だと強調する。
補償金をどうするかについては、文化庁傘下の私的録音録画小委員会で、2006年4月〜08年12月まで議論が続いた。権利者、メーカー、消費者を交えての議論だったが、結論は出ず、文化庁は「関係者の利害調整の場を非公式に設けて議論する」と説明していた。
その後5月、Blu-ray Discを新たに課金対象に加えた際、文化庁が出した施行通知では、地上デジタル放送専用録画機について、「関係者の意見対立があれば必要な措置を講ずる」と明記している。
コピー回数が制限されている地上デジタル放送について、メーカーや消費者は「補償金の対象外」、権利者は「対象」と意見が食い違う中、北京五輪前の緊急措置として、Blu-ray課金が決まったため。デジタル放送専用機の扱いについては、結論が持ち越しにしなっていた。
一方で文化庁は9月、私的録画補償金管理協会(SARVH)からの照会に回答する形で、「デジタル放送専用録画機も補償金の課金対象」とする見解を提示。SARVHはこの見解をよりどころに、東芝を提訴する方針だ。
「文化庁の解釈は筋道が通らない」(津田さん)――メーカー側と権利者側の意見が対立する中、文化庁が関係者の議論を経ず一方的に「デジタル専用機も対象」と決めた形で、「文化庁の先走り。関係者間の調整を放棄した行政の責任は重い」と津田さんは指摘する。
MIAUと主婦連はそれぞれ10月上旬に、文化庁と消費者庁に対し、「補償金について議論する場を設け、結論が出るまではデジタル専用機の課金を見送るべき」とする内容の声明を送った。だが文化庁・消費者庁とも今のところ動きがないという。
このままでは訴訟が提起され、議論も成り立たなくなる恐れが強い。訴訟になった場合は「どちらが勝ってもおかしくないが、どんな形でも不幸な結末になる」と津田さんは危機感を強める。主婦連の河村真紀子さんも「すぐにでも関係者を集め、検討を始めてほしい」と話していた。
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