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月間売り上げ10万円だが……添削SNS「Lang-8」で世界を狙う25歳社長(1/2 ページ)

» 2009年11月18日 17時29分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像 lang-8

 資金繰りに頭を悩ませているベンチャー企業経営者は多いかもしれない。世界のユーザー同士で母語を教え合うSNS「Lang-8」を運営するランゲート(京都市)の喜洋洋社長(25)もそんな1人だ。1カ月の売り上げは10万円ほどで、経費の9%しかまかなえていないため、ユーザーから寄付を募ったり、黒字化達成に必要な有料会員数をサイトの目立つ位置に掲載するなど、あの手この手で収益拡大に努めている。

 この状況だけを聞くと、Lang-8がよっぽど人気のないサイトなのかと思われそうだが、そんなことはない。世界190カ国以上の会員に利用され、会員数は9万人。日本発のサイトにもかかわらず、約7割のユーザーが日本語以外の母語を使用している。ネットメディア関係者などが革新的なネットサービスを表彰する「WISH2009」で2位に選ばれるなど、注目を集めている。

 大赤字でも、喜社長は前向きだ。「世界中でスタンダードに使われるサイトにしたい」と目標を熱く語る。普段は家賃2万4000円の自宅にほどんど帰れないほど忙しく「不安を感じている場合じゃない」とも。一体どんなビジネスモデルを描こうとしているのか、成功させるという自信はどこから生まれているのか――若きベンチャー社長の日常とLang-8の世界をのぞいてみた。

Lang-8で志望校合格?

 「Lang-8」は、外国語で日記を書くと、その外国語を母語とするほかのユーザーに添削してもらえるサイト。ほかのユーザーを友達登録したり、コミュニティーに参加して交流するといった機能も備えている。

 あらかじめ母語と学習したい外国語を登録する仕組みで、マイページには「あなたの添削を待っている最新日記」と「あなたと同じ言語を学習している人の日記」が表示される。

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 日記ページで「添削する」ボタンをクリックすると、編集画面が開く。日記本文の一部に打ち消し線を引いたり、文字色を変えて正しい表現を書き加えるなどして誤りを指摘すれば完了だ。添削結果は、各日記のコメント欄に表示される。

 今年9月には、月額525円のプレミアム会員制度もスタートした。日記と添削データをPDFファイルでダウンロードしたり、ほかのユーザーのマイページの「あなたの添削を待っている最新日記」欄に自分の日記が優先的に表示されるといった特典がある。

 Lang-8なら、身近に外国語を教えてくれる人がいなくても作文と添削の実践を通じて学べる。Lang-8で日記を書くことを宿題にしている学校が海外にあったり、「Lang-8のおかげで志望校に合格した」と話す受験生のユーザーもいるという。一方、「喜んでもらえるのがうれしい」と日記を書かずに添削ばかりしているユーザーや、添削することで「母語を見直すきっかけになった」と話すユーザーもいるそうだ。

 記者もほかのユーザーの日記を添削してみた。「母語で書かれた文章の指導は誰でも割と直感的にできる」という喜社長の言葉を聞き、気軽な気持ちでスタート。助詞の間違いなどを指摘する。会話ならなんとなく意味が通じるために気にならなさそうな細かいニュアンスの違いも、文章では気になるもの。外国語を勉強するユーザーにとっては、誤って覚えていた細かいミスに気付く機会になるかもしれないと感じた。

独特の苦労は 各国語で届くメールに「Google翻訳」で対応

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 全会員のうち日本語のネイティブは約3割。日記で使われた言語は75言語に及ぶ。海外のブログに直接メールするなどしてプロモーションした結果、口コミでLang-8が広まり、最近は英語やロシア語のネイティブが増えているという。「ユーザー同士が添削し合うギブアンドテイクのサイト」なので、特定の言語のネイティブが大半を占めるといったことがないよう「バランスを大事にしている」。

 ただユーザー対応に苦労するという。英語、ロシア語、トルコ語、アラビア語……さまざまな言語で問い合わせメールが届く。内容はGoogle翻訳を使ってなんとか理解し、「下手な英語」で返信する。宗教や政治的な問題など、規約で書き込みを禁じている内容が書き込まれたとしても、運営側で言葉が分からなければ、対応に手間取ってしまう。

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