楽器とエフェクターをクラウドに――ヤマハが示す、IT×音楽(1/3 ページ)
VOCALOIDを生み出したヤマハから、音楽の領域を広げるテクノロジーがさらに2つ投入された。VOCALOIDに関しては、既に発表済みのVOCALOID-flex、NetVOCALOIDを使ったMETAL GEAR SOLID PEACE MAKER、頓智・およびグッドスマイルカンパニー、クリプトン・フューチャー・メディアと組んだ「セカイロイド」が発表されたが、そちらは別記事を参照していただくとして、ここでは今回初披露された「クラウド型VST」と「NETDUETTO」について解説しよう。
楽器、エフェクターをクラウドに置く「クラウド型VST」
ヤマハは2004年、ドイツの音楽ソフト企業Steinbergを買収し、100%子会社としている(ヤマハ、「Cubase」の独Steinbergを買収)。自社のソフトウェアシンセを同社の代表的な音楽制作ソフトCubaseに組み込んだり、自社から出ているオーディオインタフェースにバンドルしたりといったことは行ってきたが、同社の技術を初めて積極的に活用しようというのが、「クラウド型VST」だ。
その前にVSTから説明しよう。最近の音楽制作ソフト、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)は、ほとんどがたくさんのソフトウェアシンセサイザーを搭載している。ギター、ピアノ、ドラム、シンセサイザー、ブラス、ストリングスなどさまざまな楽器をソフト化したものだ。これらはエコー、リバーブ、ディストーション、イコライザーなどのエフェクターで音響効果をつけて作りこんでいくことができる。
以前ならばハードウェアの生楽器、電子楽器を購入して、演奏したサウンドをミキサーを通して取り込み、それを重ねあわせていたのだが、いまはそのほとんどがアプリケーションの中だけで完結できる。そんな楽器やエフェクターには、アプリケーションに固有なものと、異なる複数のアプリで使える標準規格に沿ったものがある。その1つであり、最も大きなシェアを占めているのが、Steinbergが開発してCubaseに組み込んだVST(Virtual Studio Technology)だ。
VSTをサポートしているアプリであれば、基本的に互換性がある。ライバルのアプリであるSONAR、国産のSinger Song Writerはじめ、多くのDAWソフトがVSTをサポートしている。VSTをサポートするアプリはGarageBandやLogicの AudioUnits、Pro ToolsのRTAS、Cakewalk/MicrosoftのDXiなどのライバル規格と比べて多い(もっとも、ヤマハもその実数は把握していないようだ)。
それでもプラットフォームの違いは超えられない。多くのVSTi(楽器のVSTプラグインのことをこう呼ぶ)はWindows版とMac版の両方がリリースされているが、そのためには両方のOS向けのバイナリを用意しなければならない。このため、Windows版しか出していないというアプリも多い。
音楽アプリには共通の弱点もある。ライセンスの認証でドングルが必要だったり、ワンポイントだけ使いたいのに高価なアプリをまるごと買わなきゃいけないなど、クリエイターにとっては負担が大きい。要するに市場が小さすぎるのだ。
では、この市場を広げるためにはどうしたらいいか。Cubaseの技術を足がかりに、よりオープンなソフトシンセの共通プラットフォームを作ろう。そのときには、台数だけは多いNetbookや、このところ台頭してきたiPhoneなど、高機能な携帯デバイスも入れていきたい。そうヤマハは考えた。
ハードウェア非依存にするための共通プラットフォームとして考えたのが、「クラウド型VST」だ。クラウドコンピューティングと楽器。一見すると相性がよくないみたいだが、実は既にヤマハが実用化しているものがある。NetVOCALOIDやNetぼかりすがそれだ。
NetVOCALOIDの応用例の1つとして、携帯電話から文字列とメロディーを指定すると、サーバ側でVOCALOIDが歌わせて、その結果を携帯に返してくれるというサービスがある。同じようなことが、VSTでも可能になるわけだ。
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