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» 2010年03月02日 11時13分 公開

楽器とエフェクターをクラウドに――ヤマハが示す、IT×音楽 (3/3)

[松尾公也,ITmedia]
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One more thing――ネット経由でセッション「ネットデュエット」

 スティーブ・ジョブズの基調講演っぽく、今回のイベントのトリはライブパフォーマンスだった。演奏したのは、「イエスタデイ」などのヒットを持つsacra(サクラ)の木谷雅さんと足土貴英さん。木谷さんがリードボーカルとアコースティックギター、それにベースギターとコーラスを足土さんが合わせるすばらしい演奏だった。ただ、足土さんはスクリーンに映った映像(Skype)での参加。映像は若干遅れて届いているのだが、演奏はばっちり合っている。アコースティックなナンバーなので、クリック音であわせている風でもない。これはどういう仕組みなのか。

画像 sacraのセッション

 実は、足土さんは離れた場所からネットワークを通して木谷さんと共演していた。それを可能にした「NETDUETTO」(ネットデュエット)は、FTTHやADSLなどで離れた場所にいるミュージシャンを結びつけるテクノロジーとしてヤマハが開発したもの。具体的には、USBなどのオーディオインタフェースで共演相手のPCと自分のPCをつなぎ、相手のサウンドをモニターしながら自分の演奏を送出する。

 自分も相手も、共通のサーバに同時アクセスして演奏する。そのときの遅延を演奏可能な範囲に抑える、そういうテクノロジーだ。

 FTTHを使えば、十数メートル離れているところで演奏しているようなタイミングで音を合わせることができる。レイテンシーでいうと、30ミリ秒あたり。ADSLだと40ミリ秒を超えるがなんとか使えるレベルらしい。

 実はわたしもこの「NETDUETTO」をβテストしている。現在のアプリは設定画面1枚だけのシンプルなユーザーインタフェースだが、44.1KHzのステレオで30ミリ秒くらいのレイテンシーで音楽仲間とのセッションが体験できている。使っているオーディオインタフェースは、ヤマハのAUDIOGRAM6という、実売で1万5000円程度の廉価なもの。マシンはWindows XPの古くて遅いマシンだが、それでも実用になるレベルだ。ちなみにMac版も容易に開発可能だという。

 自分が流す音のモニターに自動的に遅延を加えて、ネットをはさんでいるという「遅さ」を軽減するような設定が可能で、わたしの場合は3人で自由にグダグダしたセッションを夜中に3時間ほど連続でやっても時間を忘れて楽しく遊べるくらい実用的だ(途中でカミサンに怒られた)。

 現状では、異なる場所にいる4人までが同じセッションルームに集まってセッションできる。もちろんバンドだけではなく、単にカラオケでデュエットしたりとかにも使える。

 アプリの中からWAVによるバックトラックを流して、それに合わせてみんなでソロやバッキング、歌を重ねたりというのも気軽にできる。

 このテクノロジーの利用シーンとしては、離れた場所にいるバンド仲間とのセッション、遠くにいる有人とのカラオケ体験、Skypeよりも高音質で遅延の少ないリモートポッドキャスティングなどが考えられる。ヤマハはこのソフトをどのように配布していくか決めていないが、高い価格をつけて販売するつもりはなさそうだ。

 バンド仲間がいない一匹狼のミュージシャンや歌い手が、ネット上のセッションルームに集まって、特定ジャンルの楽曲をコラボするといったことも、このソフトとサービスを使えば可能になる。「NETDUETTO」によって「歌ってみた」「演奏してみた」「ニコ生」「Ustream」に、さらなる人のつながりが生まれてくるとおもしろい。「NETDUETTO」を使った匿名だらけのセッションで、すごいバンドサウンドが生まれるのではないか。この技術があれば夢ではない。

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