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「開国せにゃならん!」 孫社長&三木谷社長、“ガラパゴス規制”を批判

» 2010年04月26日 17時24分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 「やはり、開国せにゃならん!」――ソフトバンクの孫正義社長と楽天の三木谷浩史社長が4月23日、ブロードバンド推進協議会(BBA)が主催するシンポジウム「国民の、ITによる、日本復活」で対談し、ネットビジネスの成長を阻害する日本の規制などを「ガラパゴス」と批判した。

 孫社長はBBAの代表理事。三木谷社長は、ネット業界各社が参加して2月に発足した「eビジネス推進連合会」の会長でもある。2人は対談に先立ってそれぞれ講演も行い、光回線の普及が実現する未来や、ネット関連の規制の問題点について語った。会場となった都内のホテルには1000人以上が詰めかけ、熱気に包まれた。

「開国せにゃならん!」

 「前向きなビジネスの足を引っ張る規制が最近目に付く」――三木谷社長は、日本が成長を取り戻すにはネットビジネスの振興と海外展開が不可欠にも関わらず、増える規制がビジネスの芽をつんでいると批判する。

 特に医薬品のネット販売規制は「国のネットつぶしの象徴」と強く批判。青少年の携帯電話のフィルタリング義務化や貸金業法の総量規制なども批判し、日本だけの「ガラパゴス規制」がビジネスの成長を阻害すると指摘した。

 また、NTTが推進する次世代ネットワークNGN(Next Generation Network)は、むしろ「ネクスト・ガラパゴス・ネットワーク」だと痛烈に批判。「グローバルスタンダードではない閉鎖的なネットワークをNTTが支配し、電話回線の時代に戻る。新しいイノベーションが止まる」と強い懸念を示した。

 孫社長は、日本には特有の“ガラパゴスルール”が多いという三木谷社長の主張に同意。基本的には世界標準に合わせた上で、大多数の国民が必要と判断した時だけ日本独自ルールを決めればいいと提案した。

 「鎖国はいかん。“日の丸特殊技術”を自慢する人がいるが、これは鎖国派ですよ。やはり、開国せにゃならん」――孫社長は、大好きだという幕末になぞらえながらこう話す。

「ISDNもガラパゴスだった」

 孫社長は、ソフトバンクがADSLを始めたころを振り返り、会社を犠牲にしてでも日本にADSLを普及させたかったと熱弁。幕末の志士のように、日本の将来のために身を賭し、会社の存続も賭けて大事を為したいと話す。

 「当時、日本のインフラはISDNというNTTのガラパゴスネットワークでつながっていた。ソフトバンクには金も経験もインフラも顧客もなかったが、このままだと日本の通信インフラが遅れ、ネットが成長できないと考え、社内の猛反対を押し切り、赤字を出しながらADSLを拡販した」

 「万一ソフトバンクがつぶれても、それに刺激を受けてNTTがADSLを始め、値下げしてくれて、日本のネットインフラが良くなったらいいと、僕は真剣に思っていた」

目指すは「光100%」 「NTTのアクセス網分離を」

 孫社長が次に目指すのは、国内全世帯にFTTHを普及させる「光100%」だ。光回線は次世代の水道や電気、道路のようなインフラになると展望。光100%が実現すれば、多様な情報へのアクセスが可能になり、ネットを通じた通信教育や遠隔医療、在宅勤務など新たなライフスタイルが実現、「21世紀の新しい基本的人権」と孫社長が提唱する「情報アクセス権」も確保できると語る。

 光100%を低コストに実現するための孫社長のアイデアは、(1)維持費の大きいメタル線(電話線)を全廃し、光回線に入れ替える、(2)NTT東西地域会社からアクセス回線を別会社に切り離し、電話回線と同じ月額1400円で回線を提供する――というもの。光回線敷設工事を効率的に行えば工事費も少なくて済み、メタル線の維持費がなくなることでNTTもさらにもうかる、というのが孫社長の持論だ。

 このアイデアは、原口一博総務相が提唱する、2015年までに全家庭にブロードバンドを普及させる「光の道」構想に対応したもので、孫社長は同様の主張を、総務省の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」(ICTタスクフォース)でも行ったが、自前のアクセス回線を持つNTTやケイ・オプティコム、ジュピターテレコムなどから反対意見も出ている。

 「光100%」は、ソフトバンクの利益のために提案しているのではないという。「すべての産業が光化し、クラウドでつながれば、雇用を1000万人以上生む。電子カルテは医療費を削減し、電子教科書は世界中の人々を先生にする。ソフトバンクのブロードバンドを買ってほしい、など小さなことを言いたいのではない。誰のためでもなく日本のために、すべての国民が目覚めるべき」(孫社長)

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