皆さんこんにちは。IT・情報戦略コンサルタントの辻井康孝です。
今回は、ビジネスマンがおちいりやすいワナの1つについて、お話ししたいと思います。特に経営者がコレにハマってしまうと、会社に大きな弊害をもたらすので、注意して下さい。それは、「情熱と客観性のバランス」です。
経営者であるか、そうでないかを問わず、自社の事業や自分の仕事に情熱を持って取り組む事は、必要不可欠です。自分の仕事に誇りを持ち、会社をより良くしていくにはどうすれば良いかを真摯に考え、その考えに基づいて使命感を持って日々の業務に精励することは、ビジネスマンとして1つの模範的な姿であり、それは会社にとっても、また一緒に働く社員たちにとっても、非常に素晴らしい事であると言えます。
同時に、現在起こっている事態を冷静にながめて状況を客観的に把握し、より良い結果を導き出すための合理的かつ適確な判断をしていくことも、必要です。これは情熱ではなく、あくまでも冷徹な「眼」によって、もたらされます。
優れたビジネスマンや成功した経営者には、必ずこの両面の能力が備わっています。ただ成功者はいつの時代も少数派ですから、現実にはこの1つがバランス良く機能している人を見掛けることは、比較的まれであると言えます。
僕は職業柄、さまざまな会社で数多くのビジネスマンと接してきましたが、皆このどちらかに偏っている事が多く、中には残念ながらその両方を持ち合わせていない人も見受けられたのですが(^_^;)、少なくともそのどちらかを持っていてそれが勝ち過ぎていた場合にどうなるかということを、以下にお話ししていきたいと思います。
まず、「情熱」が勝っている人は、ともすれば「アツく」なりがちです。
それ自体は決して悪い事ではないのですが、この場合は、主観的な思いにとらわれ過ぎて全体が見えなくなってしまう、という弊害が生まれやすくなります。すると事業における優先順位がなおざりになり、効果的な成果が望めなくなります。
目指すゴールは何なのか、そしてそのゴールへ最も効率良く到達するために、冷静に判断して「今一番注力すべき事は、何なのか」ということは、常に考えておかねばなりません。特に経営者の場合は、そうです。
ビジネスの現場において、「主観」が勝ってしまうと、必ず失敗します。なぜならビジネスとは、必ず「相手」があるモノだからです。特に経営者の場合、情熱が勝ち過ぎている人は、部下である社員の反応は、おおむね2つに分かれます。
1つ目のパターンは、社長とともに社員もアツくなってしまい、「火の玉軍団」のようになってしまうケース。こういう組織には、ある種の軍隊的というか体育会系の風土が生まれる特徴があります。特に不動産業界に多いですね。
ただ、それ自体は別段悪いことではなく、それどころか社長に冷徹な眼と合理的な判断力さえ備わっていれば、こういう組織はトップの意思が上意下達でスピーディに組織に浸透し、強力な団結力で猛烈に動きますから、驚異的な成長をとげることもあります。
ただ、物事がうまく運んでいる間は無敵なのですが、一旦逆境におちいった時には、一気に組織は瓦解へと突き進みます。この場合に社員を突き動かしているのは、トップに対する一種の「宗教的信奉」に近い衝動ですので、その神通力にかげりが見え始めた途端に、一気に求心力を失ってしまうからです。
2つ目のパターンとしては、社員がシラケてしまっているケースですね。
その社長の情熱の根本である価値観に社員が違和感を覚えている、あるいは社長の会社や社員に対する思いを社員側が信じていないかそれに疑念を持っている時には、特にそうなりやすい傾向があります。
つまり、価値観を共有しておらず、社長のことを信奉してもいないので、トップのその情熱は社員にとって、単に暑苦しいだけに感じられるようになってしまうのです。
するとトップの情熱は空回りします。社員は表面上、命令には従っていますが、それは義務的にそうしているだけで、実はその社長は「ハダカの王様」になってしまっているのです。こうなると何をやっても上手く行かないのは、当たり前ですよね(^_^;)。
では逆に、「客観性」が勝ち過ぎているビジネスマンの場合は、どうでしょうか? これについては、次回の記事で引き続き、お話ししていくことにしましょう。
当記事はブログ「ITコンサルの四方山談義」から一部編集の上、転載したものです。エントリーはこちら。
IT・情報戦略コンサルタント、ザイ・コーポレーション代表取締役。音楽業界、広告業界を経て2000年より現職。マルチメディア草創期よりITビジネスに携わり、上場企業を始めとする多くの企業で顧問・監査役等を歴任。情報戦略立案、Webマーケティングなど、主に企業経営者向けにコンサルティングを実施。
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