ソフトバンクが5月9日発表した2010年度(2011年3月期)の連結決算は、売上高が初めて3兆円を突破し、営業利益が前年度比35%増の6291億円になるなど、過去最高益を更新した。孫正義社長は今年度以降について「中長期の基盤をしっかり作る」と話し、11年度から2カ年で合計1兆円規模の設備投資を計画。「つながらないソフトバンクなんて言わせない」と意気込む。
売上高は9%増の3兆46億円に。携帯電話販売をiPhoneがけん引し、販売台数は前年度比110万8000台増の1024万2000台となり、KDDI(1157万台)に迫った。ARPU(契約者1人当たり収入)も140円増加の4210円となり、増収を引っ張った。
営業利益はNTT(持ち株会社)、NTTドコモに続き国内上場企業(金融機関除く)で3位の水準になる見通し。移動体事業の営業利益が54%増の4024億円と大幅に増加したことが貢献した。経常利益は53%増の5204億円、純利益は96%増の1897億円と最高益を更新した。
連結フリーキャッシュフローは5613億円を稼ぎ出し、リーマンショック後に公約した「3年で累計で1兆円」を2年で95%達成。「リーマンショック時、つぶれるであろう会社のトップにソフトバンクが上がっていたが、公約以上のペースでFCFを出している」と孫社長は胸を張る。ソフトバンクモバイルの純有利子負債残高は4月末に6270億円と、これまでに半分以上の7400億円を削減した。格付けは11年ぶりにA格に復帰している(日本格付研究所が「A-」とした)。
11年度の業績見通しは開示しなかったが、「目先の利益は追わず、中長期の基盤をしっかり作ることが中長期の増益につながる」として、携帯電話基地局を始めとする設備投資を強化する方針。10年度に4205億円だった設備投資額を今年度は5000億円に積み増し、12年度も同水準を計画している。
東日本大震災に関連してTwitterで発言を続けてきた孫社長は「この事業が人々にとって欠かせないものであることを痛感し、われわれのネットワークが十分な物でないことに対して胸を痛めた」と話す。基地局数は10年度末で12.2万局と「前年度比で倍増」の公約は守ったものの、「これで満足しているわけでなく、まだまだつながらないところあると認識している」と認め、「現時点でのドコモ、auと同等くらいまでつながるようなんとしてもやり抜く」と意気込む。
2年で1兆円規模の設備投資計画では、来年に割り当て先が正式決定する700/900MHz帯の再編が視野に入っている。「つながりやすい800MHz帯を割り当てられているドコモ、auに比べソフトバンクは不利だ」と常々主張してきた孫社長は「われわれに割り当てられないで他社にいくのなら天下国家間違っている。割り当てられることを心から信じている」と話す。
現行周波数帯の基地局の整備を続け、さらに「ゴールデン周波数帯」と呼ぶ新帯域に対応した基地局の整備という2段構えで「つながりにくいソフトバンク」という汚名を解消するまでやり抜き、顧客満足度を高めて将来の収益につなげていくという戦略を描いている。
基地局の整備には、傘下にしたウィルコムの基地局スペースを活用。現在の12.2万局のうち、約2万局がウィルコムの基地局との併設などで新設したものという。さらに9月までに1万2000カ所程度でウィルコムの基地局を活用する計画だ。
震災を受け、ソフトバンクモバイルは夏商戦向け新端末の大規模な発表会を自粛する。来週にはドコモ、KDDIが発表会を予定しているが、自粛に変更はないという。ただ、今後については冬商戦向けモデルを発表する秋に向けて改めて考えるとしている。
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