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東京国立博物館をとらえたGoogleの秘密兵器──「アートプロジェクト」撮影現場の奔走(1/3 ページ)

» 2012年04月20日 16時20分 公開
[榊原有希,ITmedia]

 世界各地の著名なミュージアムの作品をネット上で鑑賞できる「Googleアートプロジェクト」。2011年2月にスタートし、4月9日からは第2弾としてさらに拡大、40カ国151施設の作品3万件以上を楽しめるようになった。今回、日本からも初めて6つの博物館、美術館が参加。その1つ、東京国立博物館(東京都台東区)では、「ストリートビュー」の技術を用い、本館の「文化総合展」展示室をほぼ全て見ることができる。日本最大規模の博物館と米IT大企業による異色コラボの実現。関係者の苦労がにじむ、その撮影現場をのぞいてみた。

photo Googleの秘密兵器「トロリー」のカメラ

 2011年10月17日月曜日朝。休館日で来館者のいない東京国立博物館に、Googleの撮影スタッフが集まった。この日、ストリートビューと同じ技術で撮影するため持ち込まれたのは、高さ2.6メートル、重さ60キロの「トロリー」と呼ばれる手押し車。Googleがアートプロジェクトのために、独自に開発した撮影機器だ。

 通常のストリートビューは屋外の撮影のため、三輪車や自動車が利用されるが、アートプロジェクトのような室内撮影では、このトロリーが活躍する。プロジェクトのスタート以後、開発が重ねられ、6個だったレンズは15個に増やされた。解像度も75メガピクセルとアップ。今回、米Googleからわざわざ運ばれ、東京国立博物館で“日本デビュー”を飾った。

 展示室の撮影には、細心の注意が必要となる。15個のレンズで360度の視界をとらえるのだが、撮影範囲が広いため、トロリーを操作するカメラマン1人しか入室できない。映像も不自然に途切れないよう、一筆書きの要領で撮影しなければならないという。カメラマンの腕の見せどころでもあり、国内で初めての撮影には、トレーニングを重ねてのぞんだ。

photo 昨年10月の休館日に行われた東京国立博物館の撮影

 休館日で館内は静かとはいえ、お昼になればランチに出かける職員が廊下に出てくる。他のスタッフは、撮影中の展示室近くに張り付き、誰かが映り込まないよう誘導しなければならない。「まるで、隠れんぼをしているような気分になります」とは、あるスタッフ。こうして一部屋ずつ撮影された映像は合成され、シームレスの風景として閲覧できるようになる。

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