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「出版社から説明ないことに疑問」――映画「テルマエ・ロマエ」原作使用料問題、代理人がコメント

» 2013年03月04日 19時25分 公開
[ITmedia]
画像 ヤマザキさんのブログに転載された四宮弁護士のコメント

 ヒット映画「テルマエ・ロマエ」の原作使用料が約100万円だったことを、原作者で漫画家のヤマザキマリさんがテレビ番組で明かし、「安すぎるのでは」などとネットで議論が起きている。ヤマザキさんの代理人を務める弁護士が3月4日、コメントを発表し、ヤマザキさんは原作使用料の多寡ではなく、金額の根拠について出版社から十分な説明がなかったことに疑問を抱いているという。

 ヤマザキさんが原作使用料について言及したのは、2月23日にTBS系列で放送されたバラエティ番組「ジョブチューン 〜アノ職業のヒミツぶっちゃけます!」内。映画の興行収入が58億円に上ったのに対し、ヤマザキさんに支払われたのは約100万円。金額はヤマザキさんが知らないうちに決まっており、出版社から一方的に告げられたという。同作品はエンターブレインから出版されている。


画像 映画「テルマエ・ロマエ」公式サイト。映画化第2弾も決まっている

 代理人としてコメントを公表した四宮隆史弁護士によると、ヤマザキさんは金額に不満を抱いているのではなく、なぜ100万円なのかについて十分な説明を受けていないことに疑問を抱いているという。作家が責任や義務を十分に果たしているのに、出版社が説明責任という責任を果たしていないのは、偏った契約関係になると指摘する。

 金額を問題にしたのは、金額が作品へのリスペクトの度合いを示す重要な指標になるからと説明。「自分が知り得ないところで、第三者同士が自分の作品の価値を決め、十分な説明を受けることができず、結論だけ知らされる……この状態が続くと、『作品をリスペクトする気持ちがないのではないか?』という不審につながる」としている。

 ネットでは映画を制作したフジテレビへの批判も高まっていたが、フジテレビと契約したのは出版社で、原作使用料について交渉したのも出版社。「ヤマザキさんがフジテレビに押し切られて原作使用料が低額に抑えられてしまったなどという事実は一切ない」としており、フジテレビへの批判が高まっていることにヤマザキさんは「心を痛めている」という。

 ヤマザキさんはイタリアや米国など海外に居住しており、夫はイタリア人。「日本のエンタテインメント業界の商慣習が海外と異なることに違和感を覚えざるを得ず、これまでご家族に対する説明に苦慮してきた、という事情もある」とも明かしている。

出版社と作家の間に少しずつ溝が生じ始めている

 四宮弁護士はまた、「出版社はつい最近まで、書籍の映画化やゲーム化など2次利用について積極的に自らの権利を主張することはなかった」が、出版不況で「書籍の電子化や、映画化・ゲーム化等の2次利用についても、出版社独自の権利を主張をするようになっている」と指摘。

 この流れは「出版社の事業戦略上当然できわめて合理的」としながらも、その結果、出版社が立場や権限を死守しようとして作家に十分な説明をせず、作家がいらだちを募らせるなど「出版社と作家の間に少しずつ溝が生じ始めている」と実感しているという。「出版社の多くが、デジタル化や多メディア化、ソーシャル化の流れについていけず、作家との距離の取り方やコミュニケーションの図り方に苦慮し、その結果トラブルになるという流れが生じしている」との見解を示している。

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