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「創作の自由が侵される可能性」 児童ポルノ禁止法改定案、文芸家協会が反対声明

» 2013年06月17日 17時17分 公開
[ITmedia]

 自民・公明・維新が共同提出した児童ポルノ禁止法改定案に対し、日本文芸家協会はこのほど、篠弘理事長名で反対する声明を公表した。単純所持禁止は「到底納得できるものではない」と批判しているほか、附則に書かれた、漫画などの「調査研究」よって「創作の自由が侵される可能性が考えられる」などと指摘。改定案に「慎重な配慮を強く要望する」としている。

 同協会は、「児童への性的暴力をなくしていくことは社会全体が対応すべき、きわめて重大な課題」としながらも、改定案は、「児童の性的虐待への処罰や人権擁護という目的から逸脱していると思われる文言がある」と指摘する。

 現行法でも当初から「児童ポルノ」の定義があいまいで、恣意的な解釈で運用される欠陥がある指摘。単純所持が禁止されることで、「定義が不明確なものを所持していただけで処罰の対象になる、という論理は到底納得できるものではない」と批判しているほか、過去に発売された作品にも規制が及ぶことも懸念する。

 また、「児童ポルノに類する漫画などと児童の権利被害の関連性の調査研究」「施行後3年をめどに必要な措置が講ぜられる」といった附則の内容について、「被害者の存在しないフィクションの創作物にも規制を考えていくと解釈できるもの」であり、「本来、実在しない児童が登場人物である漫画、アニメに対してどのような『必要な措置』を講じるというのか不確定」だと指摘している。

 同協会は「児童を性の対象とする風潮は許されるものではなく、それを助長する創作物への対策の必要性を十分認識する」としながらも、附則の内容は「表現の自由に関わるもの」で、「創作の自由が侵される可能性が考えられる」と懸念。「文芸作品は映画やドラマ、漫画、アニメなどほかの創作物の原作になる、という一例をとっても看過できない」としている。

 文芸家や著作者、アーティストは、娯楽を提供するだけでなく、「人間が抱える葛藤や矛盾、すぐには答えの出ない困難や命題に対して有用なものを供給するもの」と説明。改定案によって「著作権者、創作者の表現の自由が制限され、文化の使命や機能が損なわれることを危惧する」としている。

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