「ドコモのiPhone参入が4年前なら壊滅的な打撃だったろうが──」。ソフトバンクモバイルの孫正義社長は9月30日開いた冬春モデル端末の発表会で、NTTドコモのiPhone販売参入について、ネットワークの改善が進んだ結果、顧客が流出するリスクは「ほとんどなくなった」と余裕を見せた。
ドコモのiPhone参入発表以降、孫社長が携帯事業について国内の公的な場で述べるのは初めて。孫社長は「ドコモの参入で、iPhoneが日本でも3社そろい踏みになる」とした上で、ドコモが「ツートップ」で機種を絞り込んだように「これから携帯会社を選択する際、数多くの端末を競い合って種類出すよりは、ネットワークの優劣をお互い競争していく時代になった」という。
iPhone 5s/5cの発売後、同社の社員が全国乗降客数トップ1000のJR・私鉄駅でつながりやすさを調べたところ、837駅でソフトバンクモバイルがトップだったという。「非常に胸をなで下ろした状況だった」(孫社長)。同社の2.1GHz帯とイー・モバイルの1.7GHz帯による最大75MbpsのLTE「倍速ダブルLTE」に加え、来春以降に計画するプラチナバンド(900MHz帯)LTEを加え「トリプルLTE」も開始する計画。「ダブルLTEで一番早くて一番つながりやすい上、トリプルでさらによくなる」と自信を見せる。
冬春モデルのAndroid端末では、「SoftBank 4G LTE」(FDD-LTE)と「SoftBank 4G」(TD-LTE、AXGP)に両対応する「Hybrid 4G LTE」を導入。前面のディスプレイ占有率が80.5%という狭額縁化を実現したハイエンド機「AQUOS PHONE Xx 302H」(シャープ製)など3機種が対応する。3G通信機能付きの「スマート体組成計」を発売するほか、スマートフォンを活用する子育て支援サービスも始める。
「単に同じスマートフォンを各社が取り扱っているというだけではなく、ネットワークやサービスで競争する時代になるだろう」と、ドコモのiPhone参入で端末ラインアップでの差別化は難しくなったとみる。「先行してiPhoneを独占して提供した結果、さまざまなノウハウが身につき、スマートフォンに適したネットワークをいち早く体験し、設計に生かすことができた」と、2年以上にわたって大規模な通信障害が起きていない実績も強調し、「世界最高のネットワークができたと自信を持っている」と話す。
ドコモ参入についても「4〜5年前からシミュレーションしていた。4年前なら壊滅的な打撃だったろうが、ネットワークのつながりやすさが改善してきて、スマートフォンで一番になった。われわれのネットワークが不満でドコモに流れていくとうことはほとんどなくなった。実際に発売され、そういうことはなかったというのが今の状況だ」と足もとの販売状況にも自信を見せる。今後は「日本では今の状況が3社ともに拮抗する状況が続くのでは」と、加入者シェア動向などに大きな動きはなくなるとみる。
その分、注力するのが子会社化した米Sprint Nextelだ。「Sprintは米国で上位に対しかなり差を付けられている3位。ボーダフォン買収時に近い状況で、Sprintには多くの伸びしろがある」と力を込める。iPhone発売イベントに姿を見せなかった孫社長は「情熱を失ったわけではない」と話す一方、「Sprintでも世界最高のネットワークを実現したい。競争で作り上げたノウハウを世界に大いに羽ばたかせたい」と米国展開に強い関心を見せていた。
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