中国は日本と同様、実質無料でスマートフォンが入手できる状態なので非常に元気だが、その他の国では無料スマホはまだなく、そこそこ所得があるインテリのみが使っている状況だ。東南アジアやインドではまだスマートフォンが普及しておらず、これからゆっくりと普及していいき、定番アプリとしてメッセンジャーアプリも普及していくだろう。スマートフォンが普及しつつあるスタートアップ段階の今、ユーザーを囲い込めば囲い込むほど将来は指数関数的にユーザーが伸びていく一方、友人がほとんど使わないサービスなら切られていく。競合サービスがこれほどあるだけに、ユーザー数だけでなくアクティブユーザーも意識してみるべきだろう。
アジアの新興国では、音楽ダウンロードやゲームのダウンロードが人気だ。その価格は数十円からと、1ドル以下なので、GooglePlayやApp Storeで利用するなら現地の物価感覚からして高過ぎる。そこで通信キャリアが間に入って、プリペイド分から差し引く支払いシステムが一般的だ。現地に根付いた支払いシステムと物価を採用することで、より現地の人々にとって身近なものになっていく。
LINEは、「LINEは“コンテンツ”と“コミュニケーション”という2つのバリューを持っている」と説明する。「コミュニケーション」では「無料でストレスなくコミュニケーションができること」が新ユーザーの開拓に重要になる。
だがアプリによっては時々つながらないという苦情を各地で耳にすることもあり、またNokiaなどのフィーチャーフォンで非対応のメッセンジャーがあったりして、意外や誰もが導入できる環境にない。後者については、フィーチャーフォン経由でのFacebook利用者は結構いるので無視できない。LINEもSymbian搭載の一部機種に対応しているが、Symbian端末の対応機種の数ではWeChatに軍配が上がる。激戦のスマートフォンでは、「LINEは世界的にシェアの高いNokia、Samsung、ソニーの端末にプリインストールしていただくなどの取り組みを行っている」という。
「友人が使うから」だけではなく「機能的にデザイン的に好きだから」という理由でアプリを使う人もいる。LINEは「コンテンツ」面の差別化としてコニーやブラウンなどキャラクターをプッシュしており、各国のアーティストやイラストレーターを採用してスタンプを制作したり、また現地企業や団体、セレブと協業して公式アカウントを開設したりしている。現地でのプロモーションを見ても日本製とも韓国製ともアピールしているようには見えない。「LINEは日本で開発、誕生したサービスではあるが、私たちのゴールは世界のインフラになることなので、日本のLINEだとプッシュしていないし、またクールジャパンを意識してはいない。現地の著名人を採用していく」という。
Kakao Talkは「韓流スターが好きだから」という理由で利用する人もいれば、韓国が好きではないからという理由で敬遠する人もいる。だがWeChatは中国製だから嫌がる、という人はあまりいないようだ。
LINEのキャラクターとローカライズされたスタンプはLINEの強みだ。それで勝てるかといえばそうでもなく、他のメッセージングアプリを見るに、まだ機能拡張の余地はありそうだ。日本人は好まないであろう「近所の人とランダムチャット」機能の搭載といった選択を迫られることもあろう。ユーザーの取り合いが起こる地域がある一方で、ひとつのメッセージングアプリが圧勝する地域も出てくるだろう。
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