「STAP細胞の作成には200回以上成功した」「実験ノートは2冊ではない」――「STAP細胞」問題で会見した理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーは、集まった数百人の記者を前に、時折言葉に詰まりながらも、ゆっくり、丁寧に質問に応対した。
理研の調査委員会は4月1日、Natureに掲載した論文に研究不正があったと認定した最終報告書を発表。小保方氏はこれを不服として8日、不服申し立てを行い、受理された。
小保方氏は代理人弁護士2人とともに会見に出席。「不勉強なまま自己流でやってしまって本当に反省している」と謝罪を繰り返しながらも、「STAP細胞はあります」と断言。「研究者としての今後があるなら、STAP細胞の研究を続けたい」と、研究継続への意欲を見せた。
調査委から報告書を受け取った時は「正直、あまりの驚きとショックに何も考えることも言うこともできなかった」という。同席した弁護士のすすめで不服申し立てに踏み切った。
調査委が不正と認定したのは(1)学位論文の画像に酷似した画像をNature論文1に使用したことと、(2)同論文1で電気泳動画像を切り貼りしたこと――の2点。前者を「ねつ造」、後者を「改ざん」と認定している。
(1)については小保方氏は、ミスで画像を取り違えたと説明。「載せなかったことと、ないものを作り上げた(ねつ造)ことは全然違う話。それを混同して判断しているのが問題」(室谷和彦弁護士)と指摘する。また、自らミスに気づき、訂正用の真正な画像も用意しており、「単なる画像の掲載違いであり、ねつ造ではない」(同)と主張している。
また、論文1に掲載された画像は博士論文のものではなく、ラボミーティング(共同研究者間の会合)用のPowerPointの画像を使用したものという。にも関わらず調査委は、学位論文から切り貼りしたはずと決めつけたとし、調査が不十分だと指摘している。
(2)の切り貼りについては、「結果がなかったのにあったと見せかける改ざんではなく、結果はあるが、それを見やすくするため」(室谷弁護士)だったと主張。調査委が同じように画像を切り貼りしてもズレたと報告したことについては、小保方氏と異なる方法で再現しようとしたっためだと指摘した。
「わたしが不勉強なまま、自己流でやってしまったことを本当に反省している。申し訳ございません」――小保方氏は会見で、反省の言葉を繰り返した。
画像の取り違えに気づいたのは2月18日。「すごく古いデータをさかのぼり、学生時代の写真と気づいた」という。まず早稲田大学に対して、学位論文のデータをNature論文に用いてもよいか確認し、理研の上司にも確認した上で、Natureに修正依頼を出したという。
理研の調査委に対して画像の修正を申し出た際、博士論文と同じ画像だと報告しなかったのは、「そこまで気が回らなかった」ためであり、「意図をもって触れなかったのではない」と説明する。
画像の取り違えが明るみに出たのは、共同研究者の若山照彦山梨大学教授の告発がきっかけだった。小保方氏は「1月の記者会見以降、わたしのメールは完全にパンク、若山先生の電話もパンク」していたため連絡が取れず、事前に連絡ができなかったと釈明している。
調査委員会の報告書では、実験ノートが2冊しかなく、データの管理がずさんだったと指摘されたが、「そんなことはない」と反論。「理研に提出したノートが2冊だっただけで、実際はもっとある。ノートの提出を突然、その場で求められたので、その時にあったノートが2冊だった」。ノートは米ハーバード大など過去に所属した研究室に分散しており、「少なくとも4〜5冊はあると思う」。STAP研究の写真は、「1000枚……分からないですけど大量に、何百枚の単位であります」。
ノートの記述方法については、「わたし自身は十分にトレースできるものだったが、第三者がトレースできるかという視点では書き方が不十分だった」と反省。「学生のころからいろんな研究室を渡り歩き、研究の仕方がかなり自己流で走ってきてしまった。わたしの不勉強であり未熟さで、本当に情けなく思っている」。
実験ノートを公開するつもりがないか問われると、「秘密実験もたくさんあるので、すべての方に公開する気持ちはない」と述べた。
Nature論文の撤回に同意したことはないという。「論文の撤回は、国際的には、その結論が完全な間違いだったと発表することになる。結論が正しい以上、撤回は正しい行為ではない。撤回を視野に入れて検討したらどうかと理研から話を受けた時には、はい、分かりましたと言ったが、撤回自体には同意していない」
多数のコピー&ペーストが指摘されている博士論文については、取り下げについて早稲田大学に問い合わせたが、「論文は授与されるものであり、本人が授与にふさわしいかどうか判断する立場にない」と言われ、取り下げは行われなかったという。
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