ただ、これらのビジネスが大成功したとしても、アプリ単体の収支はトントンかわずかな黒字にとどまるとみている。「大事なのは、ユーザーとコンテンツをつなぐ道を敷くこと」。多くの人やコンテンツが通る広い道を作ることができれば、その周辺の“道の駅”や“街”も発展。業界全体が活性化し、DeNAのエンタメ関連ビジネスの利益にもつながると期待する。
ハッカドールの目標は「武道館単独ライブ」だと岩朝さんは笑う。「数百万インストールなどの目標もあり得るが、武道館やシビックホールでの(ハッカドールの声優による)単独ライブを目標に掲げたほうが盛り上がるので」
ハッカドールの真の狙いは、単体でのビジネス化や武道館ライブの成功ではなく、エンタメ業界全体の活性化だ。
「いまのエンタメ業界はあまりサステイナブルではない」と岩朝さんは指摘。1週間に約50本ものテレビアニメが放送されているが、費用を回収できるのは半分以下。アニメーターや製作会社、出資者が赤字を被っている。
赤字のリスクを回避するために製作会社は、既存のヒット作のシリーズ化に頼るなど安全策を採らざるを得ない。「そうなると資本力の勝負になり、作品がどんどんマス向け・画一的になる。文化的案側面が減って独自性が失われ、プレイヤー数が減ってエンタメのバリエーションが減ってしまうのはすごくつまらない」
ハッカドールが目指すのは、多様なコンテンツを多様なユーザーに届けるマッチングの場だ。コンテンツとユーザーをつなぐ“道”を太く大きくすれば、“尖った”作品が埋もれることなくふさわしいユーザーに届き、エンタメの多様性の確保につながると展望する。
理想とするのはコミケだ。「コミケは、ファンが興味のある作品やキャラに触れ、より深く知る情報収集の場」。ハッカドールも「オンライン版コミケ」のようなイメージで、作品とユーザーをつないだり、ユーザーの意見を作品に反映させられる場に育てていきたいという。
「『初音ミク』や『モンスターストライク』『パズル&ドラゴンズ』も、ビッグヒットを確信して出したものではないと思う。それぐらいの“遊び”というか、尖ったものを出せる余力、雰囲気を作りたい」
「ハッカドールもDeNAの中では“尖った遊び”。全員に止められたが、出してみると社内外から反響いただいた。こういう遊びは続けていくし、もっとみんなもやればいいと思う。もっとチャレンジャーが出てきてほしい。そのための場としてハッカドールが活躍できればありがたい」
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