――文化の点でいうと、日本の絵文字が世界の“Emoji”になって他言語でも見る機会が増えたように思います。
丹羽さん:アメリカではこの数年でかなり普及したと感じます、絵文字専用のSNSやチャットサービスもできてますね。日本語以外のiOSでも絵文字キーボードが標準搭載(2011年、iOS 5から)されてから数年かけてじわじわと広がった印象です。
Twitterには前々から投稿することはできたのですが、どのデバイスでもきちんと表示できるようになったのはわりと最近です。iOSやAndroidでは見られてもWebでは文字化けしていた記憶ありませんか? 当時は優先順位として低かったのですが、Unicodeで標準化されましたし、すでにコミュニケーションの重要な要素の1つになっているということでWebでも対応しています。
――最近日本では、幼児が付けるようなチューリップ型の名札を「Tofu on fire」と解釈しているツイートが話題になりました。
丹羽さん:ああ「NAME BADGE」! これは僕たちも苦しめられたんですよ……!
Unicodeで標準化されたのでガラケー時代のような「違うキャリアの絵文字が表示されない」という事態はなくなったとはいえ、各社の絵文字は当然それぞれ著作権があって別物なんです。AppleはAppleで、GoogleはGoogleで、それぞれ1つずつ自前で作っているわけです。なので「絵文字表示に対応する」ということは表示する絵文字素材を1つ作らなくてはいけないということ。僕はこれを1つずつレビューする役目だったんですが……ハッキリ言って大変でした。
例えば「NAME BADGE」はその一言だけがUnicodeのリファレンスとして定められているんですが、それだけ見てアメリカのスタッフがあの赤いギザギザしたものを描いて持ってくるわけないですよね(笑)。案の定クリーム色の四角い絵を持ってきたので「全然だめ、この形じゃないと」って、これは子どもが付ける名札、花の形をしてるんだよ、って“赤いギザギザしたもの”の説明を英語でするんです。
――そ、そんな苦労が……。名前と形だけじゃ文化の部分までは伝わらないですもんね。
丹羽さん:花火の絵文字、見てほしいんですけど「線香花火」なんですよね。持ち手が上に付いている。でも彼らにとっての「FIREWORKS」は独立記念日とかの打ち上げ花火なわけで、これもだめ出しですよね。もちろん説明もします、「日本には友達や家族と手で持って楽しむFireworksがあって、線香花火は特に光の感じが重要で、打ち上げ花火と違って……」。
「天狗」もかなり難航しました。最初に上がってきたものが正面を向いてて、鼻の部分が丸く示されているだけだったので「違う! これは鼻が長いのが一番特徴的なところだから!」って。……いやー、Wikipediaには本当にお世話になりました。天狗は「Tengu」という項目になっています。
そんな感じで、今の時点で200個以上の絵文字に対応しています。多い時は週に20個、30個と千本ノックのようにレビューしていました。
――絵文字に対応する意義はどのあたりにあるのでしょうか。
丹羽さん:アクセントとして単純にコミュニケーションを楽しくしてくれますよね。そのためには視覚的なイメージ、意味よりも色や形の表現にブレがないことが何より重要です。「NAME BAGDE」をチューリップとして使うのも「Tofu on fire」として使うのもどちらも正解で、「名札」という意味が込められている必要はないわけです。
絵文字に限らず、Twitterが常に考えているのは140文字の限られたテキストを中心に、その中で表現する手段を写真や動画も含めてどうリッチに楽しくしていくか。そのことを再優先にプロダクト作りに取り組んでいます。
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