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360度から音の世界に没入 人の“気配”も再現する「音響樽」、東京電機大学が開発Inter BEE 2015

» 2015年11月18日 19時57分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 東京電機大学は、「Inter BEE 2015」(国際放送機器展、千葉・幕張メッセ、20日まで)に、音の波面を立体的に再現する音響装置「音響樽」を出展している。樽型の部屋に入り、さまざまな場所の音声を疑似体験できる。

photo 音響樽
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 従来の立体音響と異なり、樽の内壁に96個のスピーカーを配置することで、音の波面を収録時と同じように物理的に再現する。樽の中に入ると、全方向から音楽や潮騒の音が聞こえ、あたかもライブ会場や浜辺にいるような“没入感”を体験できる。

photo 前面のドアから中に入る
photo 内側一面にスピーカーを配置

 波面を操作し、人の気配も再現できる。記者の取材中にも、背後から「失礼します、機械の調整を行います」と聞こえ、スタッフの気配を感じて振り返ったが、実際は音声を再生しただけで誰もいない――と驚く一幕があった。

 音響空間研究室の伊勢史郎教授が2010年から開発をスタート。空間内の波面を自在に操る「境界音場制御(BoSC)の原理」を利用し、樽の断面を正九角形にして反響を高める――などの試行錯誤を繰り返し完成にこぎ着けた。伊勢教授は「360度を画面で囲んだ没入型“視覚”ディスプレイ装置はあるが、聴覚では実現不可能と言われていた。ならば自分が可能にしようと燃えた」と語る。

 担当者は「歌舞伎や演劇などの音声を収録し、地方の興業や高齢者向けのサービスとして活用できれば」と話す。システムの小型化にも取り組み、音響装置をすべて床下に埋め込む予定だという。

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