金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた概念として、今IT業界で注目されるのが「Fintech」(フィンテック)と呼ばれる分野だ。金融機関や既存のITベンダーだけではなく、スタートアップ企業の台頭も目立つ。
資産管理アプリ「Moneytree」を開発するマネーツリーもFintech分野のスタートアップの1つだ。10月には創業3年目にして、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルというメガバンク系ベンチャーキャピタル(VC)のほか、米salesforce.comの日本法人から大型出資を受けるなど、注目は高い。
Moneytreeは、銀行口座やクレジットカードの明細を一括管理できる個人向けのアプリ。あらかじめ口座やクレジットカードなどの情報を登録しておくと、残高や利用額を自動的に更新し、収支の状況を把握できる。1500以上の金融機関のほか、コンビニや家電量販店のポイントカードの残高にも対応し、「家計簿より楽チン!」をうたう。
同社を率いるポール・チャップマンCEOはオーストラリア出身。日本に留学経験があり、母国でもスタートアップ立ち上げ経験を持つ起業家だ。2012年に東京・渋谷でマネーツリーを創業し、翌年4月に「Moneytree」iOS版アプリをリリース。個人向け以外にも、有料のモバイル経費精算サービス「Moneytree PLUS」、モバイル法人口座管理サービス「Moneytree PRO」も展開している。
数あるスタートアップの中で快進撃を続ける理由は――チャップマンCEOによれば、第1の理由は「徹底的に作り込んだUX(ユーザーエクスペリエンス)」だという。Moneytreeは大きく「口座残高」「支出」の2画面で構成されており、銀行残高やクレジットカード、電子マネーの利用履歴など、サービスや手段を横断して全資産が一目で分かるシンプルな設計となっている。
ネットバンキングは普及しつつあるものの、金融機関ごとに別のWebサービスにアクセスするのは不便だ。「それぞれでアプリを制作しても、そこでの取引しか見ることができないため、ユーザーにとって利便性は向上しない」(チャップマンCEO)。
チャップマンCEOはユーザーの視点に立ち、「複数の口座をまとめて表示することで初めて、個人が使う価値が生まれる」と話す。「UXを高めるのは勘所が難しいし、時間も要するが、実店舗以上に快適さを感じられるサービスがあれば、必ず支持されると考えた」(チャップマンCEO)。
無料アプリにもかかわらず、バナー広告が表示されないのも特徴だ。チャップマンCEOは「個人の口座などプライベートな情報が表示される画面に、広告が現れるのは不愉快だろうと判断した」と、徹底的なユーザー視点での開発を掲げる。
「Fintech業界は、ゲームなど他のアプリに比べて、センシティブで規制が厳しい。広告を排除したことで、ユーザーの信頼を獲得し、ブランドとしての有意性につながった」(チャップマンCEO)
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