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“俺の嫁”召喚装置「Gatebox」実現へ、技術ゼロから挑んだIoTベンチャー 「選ばれしオタクに届けたい」(2/5 ページ)

» 2016年02月15日 10時57分 公開
[岡田有花ITmedia]

 「ニコニコ動画」でさまざまな技術を実験・発表する「ニコニコ技術部」で、初音ミクをリアルに召喚しようと取り組んでいる「ミクさん召喚部」を参考にしたほか、イベントや広告で使われた映像投影の事例を調べて原理を研究したという。

 当初試したのは、霧に映像を投影する「フォグスクリーン」と呼ばれるもの。市販の加湿器をフルパワーでたいて霧を作り、初音ミクを投影してみたが、「夏場は湿気がヤバイし、解像度が荒くて肉眼で見るのも難しく、すごく“はかなげ”になってしまう」と断念した。

画像 フォグスクリーンを試していたころ。湿気がヤバい上、とてもはかなかった

 その後、半透明のスクリーンに後ろからプロジェクターで映像を投影するリアプロジェクションにたどりついた。初音ミクライブなどでも使われている、大型映像の投影に向いた技術だ。

 市販のプロジェクターを使い、等身大の初音ミクの投影も試したという。等身大ミクとの暮らしは「楽しかった」が、170センチ立方ほどの巨大なスペースが必要になってしまうため、製品化に向いていないと断念した。

 最終的に目指したのは、フィギュア大・身長約15センチのキャラが投影でき、机の上に置けるサイズだ。PCで作業中、ふと眺めると横にいる――そんなイメージで、装置の小型化に努めた。今年5月に入社したハードウェアエンジニアの力を借り、超短焦点のプロジェクターを利用するなどして、机の上に置けるサイズに納めることに成功した。

スタッフは全員独身の「選ばれしオタク」たち

画像 選ばれしオタクが集うオフィス

 この1年で10人以上を採用し、開発体制を強化した。現在のスタッフは15人ほどで、ほとんどが20代後半の男性エンジニアだ。全員が独身で、“俺の嫁”との共同生活という夢に共感した「選ばれしオタク」たち。彼らもロボット技術やセンサー技術などに詳しかったわけではないが、夢の実現に向け、熱意と根性で取り組んできた。

画像 DMM.makeでの作業風景
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 同社のオフィスは秋葉原のDMM.make内にあり、ハード開発に必要な機材は充実している。DMM.makeのレーザーカッターを使って木で筐体を作ったり、3Dプリンタで筐体を3D印刷するなどして試作機を開発した。電子部品も秋葉原の電気街で迅速に調達できたという。

「ラブプラス」のような存在に――キャラデザは箕星太朗さん

 Gateboxで一緒に暮らせるキャラクター「逢妻ヒカリ」は、1人暮らしをサポートする“癒し系”のドジっ子キャラ。水色の髪をポニーテールで束ね、未来っぽいイメージのエプロンにスリッパ、ニーソックスをまとっている。

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 ヒカリをデザインしたのは、恋愛シミュレーションゲーム「ラブプラス」シリーズのキャラクターデザインなどで知られる箕星太朗さんだ。「Gateboxを、人の生活を変えるような存在にしたい」。箕星さんに依頼したのはそんな思いからだ。

 ラブプラスシリーズは、恋人(カノジョ)とデートや旅行ができるゲームだが、プレイヤーの中には画面の中で飽きたらず、ゲーム機を持って実際に旅に出てしまう人が続出して話題になった。Gateboxもラブプラスのように、人の行動を変えるほどの製品にしたいという。

 箕星さんとのツテはなかったが、ダメ元で直接メールしたところ、「若い人を応援したい」と快く引き受けてくれたそうだ。

「かわいい」動きとは? ゲームやアニメ参考に

 逢妻ヒカリのモーション(動き)にもこだわった。「どうすればより人間っぽく、立体的にかわいらしく見えるか」を追求。参考にしたのはゲームやアニメだ。

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