ジェットさんは昨年、YouTuberとして初めて作家やアーティストなどのクリエイターを対象とした「文芸美術国民健康保険組合」に審査を経て加入している。確定申告などの具体的な作業は、これまでフリーランサーとして関係を持ってきた税理士にお願いしているそうだ。
急速に人気を拡大したYouTuberをはじめ、ネット上に配信したコンテンツが話題を集め、まとまった収入を得ることで、確定申告が必要になるケースはある。ジェットさんが顧問を務めるYouTuberプロダクション「UUUM」では、所属クリエイターに納税に関するサポートやアドバイスも行っている。
2013年に発足したUUUMには、現在40人以上のクリエイターが所属しており、企業とのコラボPR企画などを展開している。未成熟な市場、個人の経験の浅さから発生しがちだった「1人では寄せられる依頼を管理しきれない」「相場が分からず、不当に安い値段で請け負ってしまう」などの問題を解消し、メディアとしてのYouTube活用を拡大・発展することが目的だ。
新進クリエイターを発掘すべく、数百人規模の支援ネットワークも展開。YouTubeに特化したお笑いの形を追求し、チャンネル登録者数23万人を超える大学生ユニット「水溜りボンド」など、新たな“YouTubeスター”を輩出している。
コンテンツプラットフォームとして、そして広告市場としてのYouTubeの存在感を考える上で、若年層ユーザーの多さを懸念する声は少なくない。ジェットさんは「確かに世代に偏りがある側面はあるが、今生活のメインのコンテンツとしてネットで動画を楽しんでいる若い子たちがそのままスライドして10年後、20年後にスライドしていくということ。見るコンテンツは変わっていくかもしれないが、視聴習慣の有無は大きい」と逆に期待を寄せる。
とはいえ、動画市場の発展と今後に楽観的なわけではなく「正直、まだどうなるか分からない」。「今興味がない人に振り向いてもらえない、有料になりえないのは根本的にまだコンテンツとしてクオリティーに限界があるのだと思う」――と話す。
「HuluやNetflixなどのVOD(ビデオ・オンデマンド)サービスに1000円、2000円払えば世界中の完成したコンテンツがいくらでも見られる時代に、僕たち“素人”は何ができるのか。米国のようにテレビやVODと連携して制作できる体制や、大きな資本が入ってくればまたシーンは変わる気はするが……」(ジェットさん)
動画ビジネスは拡大を続けており、配信参入者も続々と増えているが、今、“売れる”YouTuberになるコツはあるのだろうか。
「常にトレンドをつかみ続けること。自分がやりたいことと、視聴者が求めることは必ずしもイコールではないのはコンテンツ作りでは当たり前。時には意識的に目的と手段を取り違えながら、サービス精神を持って楽しさを提供できている人が人気を集めていく」――とこの10年間を振り返って言う。
「とはいえ、自分はそれとは逆のスタイルを取ってきたのも事実。例えば今ゲーム実況は大きく伸びている分野だが、僕は苦手なのでやっていない。その分ガジェットとレビューに真摯に取り組むこと、それはそれでブレない需要がある。結局は自分の得意分野や興味をきちんと見極めて形にできるかどうか」(ジェットさん)
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