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TwitterのGIFアニメ添付機能、ユーザーが「著作権侵害」に問われる可能性は?――福井弁護士に聞く(2/2 ページ)

» 2016年02月29日 10時45分 公開
[山崎春奈ITmedia]
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 福井弁護士によると、「フェアユースを適用するかどうかには利用の目的や量、作品の性質などさまざまな要因があるが、最も大事なことはオリジナルコンテンツに経済的に損害を与えないこと」。フェアユースの概念を前提とすると、ツイートやメッセージにあいさつや感情表現としてGIFアニメを添付する行為は比較的合法になりやすい。

 米国では合法とはいえ、「サービス提供国と利用者の国が異なる場合の解釈は一概に言えないが、少なくとも今回の例に対しては、GIFアニメを添付するユーザーの行動が米国法型フェアユースの適用範囲として考えられるかは疑問」という。YouTubeにアニメやドラマをアップロードしたユーザーが日本法に基づいて逮捕されるケースがあるように、他国のWebサービスでも国内での利用は国内法を適用するという解釈が自然だ。

 日本の著作権法における「引用」と米国における「フェアユース」は異なる概念であり、国境を超えて同じサービスを利用していても、法的な正当性を考える上では個人レベルで気をつける必要がありそうだ。

サービス提供側の責任は?

 では、GIFアニメを添付したユーザーが著作権侵害とされた場合、Twitter社の責任はどうなるか。米国に本社やサーバを置くTwitter社は米国の法律下にあり、デジタルコンテンツの投稿についてデジタルミレニアム著作権法(DMCA)のもとで管理されている。条項の1つとして、Webサービス上で著作権侵害行為が発生した時は、権利者からの申請を受けて当該コンテンツを削除対応すれば運営者を免責する――という規定があり、YouTubeの発展などに大きく貢献してきた。

photo GIPHYの「Anime」ジャンルには見慣れたタイトルが並ぶ

 Twitter、提携先であるGIPHY、RiffsyはこのDMCAに則っており、アニメやドラマの権利者から申請があった場合に削除対応すれば、米国では基本的に問題ない運用とみなされそうだ。とはいえ、福井弁護士は「検索するGIFアニメの中には権利未処理のものが含まれ、自己責任で使うよう分かりやすくユーザーに説明すべき」と指摘する。

日本版フェアユースの可能性は?

 現在、日本の著作権法は、「引用」「複製」「教育現場での利用」など個別の利用形態に合わせて例外規定を設ける形で運用しており、その分量は数千字にのぼる。福井弁護士は、「日々新しいコンテンツやサービスが生まれる今、1つずつ後追いで検討・策定していくのには限界がある」と、新たな包括的指針を定める必要性を話す。

 とはいえ、米国版フェアユースがそのまま導入される可能性はやや低いという。「類似のルールを持つ国は他にもあるが、米国は利用面で自由度が広いのが特徴で、国内での導入を検討する際に不安を抱く権利者もいる。欧州など、日米の中間的な基準を採用している例もある」(福井弁護士)。

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)により著作権侵害の一部を非親告罪とすることが決まるなど、著作権に対するしばりはこれまでより強くなる可能性がある。一方、新ビジネスや創作活動を制限しない、萎縮させないための方策に関しても各所で議論が続いているという。

 「今回の機能を離れて言えば、米国がWebサービスの世界でヘゲモニー(覇権)を握るまでにフェアユースの寄与が大きかったことは明らか。新たなコンテンツビジネスのチャンスで日本が“負け”続けないためにも、時代にあったルールを望む機運は高まっている」(福井弁護士)

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