東日本大震災からもうすぐ5年。震災の記憶を風化させないのはもちろんですが、あの経験から何を学び、後世に伝えるかが問われているように思います。
そこで今回、取り上げたいのが「流言」や「デマ」。災害時は多くの人が不安を感じ、また十分な情報を得られないため、流言やデマが広まりやすくなります。大量の流言やデマが飛び交うと「救助活動に支障をきたした」など、2次災害を生む要因にもなるのです。流言やデマを見破る方法、拡散しないための対策について、この機会に考えてみませんか。
「流言」とは、根拠が不確かなのにもかかわらず、大勢の人に広まってしまう情報。そして「デマ」は、相手を貶めるために意図的に流される情報のこと。
どちらにも、定番ともいえるパターンがあります。災害のたびによく似た流言・デマが発生していることを知れば、実際に見聞きした時に「これってデマ?」と疑問を持つことができます。
いかがでしょうか? どれも、どこかで見た(聞いた)ことがありますよね。憶測や伝聞、心の奥底にある不満や差別意識……災害時には、こうした感情が流言・デマとなって表面化するようです。
「犯人が誰かはともかく、災害時は犯罪が増えるのでは……?」と心配する声も聞きますが、実際の災害時には、空き巣など「混乱に乗した犯罪」は増えますが、凶悪犯罪は増えないのだそうです。
このような情報には、「誇張して伝えられている」「時間が経過し、すでに事実ではなくなっている(物資や寄付を必要としていない)」などの可能性があります。「自分が直接聞いた」あるいは「確認をとることができた」情報以外は、鵜呑みにしないことを心がけましょう。
これらは、すべて流言やデマの定番。少しでも怪しいと思ったら、「反射的にリツイートしない」「友人知人に転送しない」こと。ひと呼吸おいて、情報の正確性を調べてみてください。
ボランティアや炊き出しなどで被災地を訪れた人が、「見たままの情報」を発信する……こんなケースもありますよね。確かに「伝聞」ではありませんが、あくまで「一面に過ぎない」ことを、発信する側も、情報を受ける側も意識することが必要です。
「災害時でも整然と行動し、お互いを思いやる日本人」「混乱が起きなかったのは日本の治安がいいから」……こんな話をよく聞きますが、実はこれもデマの一つです。
緊迫した状況下では、多くの人が「利他的」になり、見知らぬ同士で助け合うようになることが、さまざまな国での調査によって明らかになっています。日本社会だけが特別なわけではないのです。
この事実は、世界的にもあまり知られているとは言えないようです。「災害が起きると治安が悪化しパニックが起きる」と信じている人が多く、映画などでも「ヒステリックに逃げ惑う被災者」が描かれたりします。
かつてアメリカ南部をハリケーンが襲った際には、「人びとが暴徒化した」「町が無法地帯になった」などの噂が流れ、それをメディアや警察が信じてしまったことで被害が広がりました。実際には、物資を分け合ったり、逃げ遅れた人の救助を手伝ったりと、被災者のコミュニティが生まれていたのだそうです。
こうして見てくると、「自分だけが」特別な情報を知っている、「自分たちだけが」特別に優れている……こんな心理が、「流言」や「デマ」の発生・拡散に関わっている気もしてきます。国や民族を超えて、よく似た感情や行動のパターンが生まれる……これを知っておくことが、情報を吟味するためのヒントになるのかもしれません。
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