「版」を作ることからスタートする従来の印刷技術には、
――などいくつかのスタイルがあります。このいろいろな印刷の種類を使うことによって、さまざまなデザイン表現の壁紙を作ることができるわけです。
従来の印刷技術は印刷スピードの速さから大量生産に向いていますが、版の製作や印刷の準備に費用と時間がかかってしまいます。
そしてもう1つの制約が、柄の大きさと色の数です。ロール状の版であれば、図案(柄)は円周の長さで繰り返すデザイン(リピートデザインと言います)にする必要があり、色ごとに版が必要です。自由度にも限界がありますし、手間もコストもかかるとなると、さまざまなパターンを用意するのは難しそうですね。
では、なぜ海外の壁紙はこれだけたくさんの種類が存在するのでしょうか。その秘密は「従来の印刷技術とデジタル印刷技術の組み合わせ」です。
蛍光色やキラキラ光るラメ入りなどの特色インキ、表面の凸凹(エンボス)などは「版」がないとできないデザイン。そこに、版いらずでデザイン図案を自由にプリントできるデジタル印刷を掛けあわせる新旧技術の融合で、本来ある制約を飛び越えることができるのです。
例えば、100色バリエーション! という壁紙の場合は、売れ筋の3色程度を従来の印刷技術で作り上げ、残りの97色はインクジェットで重ね刷りする形でそろえていました。後から加えるデザイン(加飾)にデジタル印刷を活用することでデザインの可能性は無限になります。
壁一面を画面とした大きなパノラマ写真のような壁紙、50年前のデザインのリメイクやオマージュも自由自在。単に復刻するだけでなく、色やサイズ、繊細な表現を現代風にリデザインすることもできます。
海外の商品を中心に紹介してきましたが、もちろん国内でも面白い事例はいろいろ。今回の内容を踏まえて、次回は「40年前の壁紙をリメイクしてみた」を取り上げたいと思います。
デジタル印刷技術が進化した今だからこそ、決められないほどの選択肢がある「壁紙」。この春はお気に入りの壁紙を探し出し、お部屋のイメージをガラッと変えてみてはいかがでしょう。
著者:霄洋明(おおぞら・ひろあき)
日本HP大型プリンターエバンジェリスト。ワイドフォーマット事業本部に所属し、大型のインクジェットプリンターのソリューションアーキテクトを担当。
東京都中野区出身。学生時代は総合格闘技と彫刻(木彫・塑造)に熱中。大型インクジェットプリンタ黎明期ともいえる1996年頃にアルバイト入社した画材店で大型プリンタと出会う。
その後、広告代理店で、屋外/交通広告・商業施設装飾・サイン計画などに関わり、企画ディレクション・制作施工管理を経験。2010年より 日本HPに入社。デジタル印刷を活用したサイン・ディスプレイとインテリアデコレーションの企画・制作・施工の知見を生かし、HP Latex・UVプリンタ(業務用大型プリンタ)の市場・用途開発を担当。現在は、デジタル印刷技術によってサイン・ディスプレイ業界、インテリア業界、印刷業界をつなげるハブとなってお客様の事業領域拡大を支援することがテーマ。
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